経産省と高圧ガス保安協会が二酸化炭素消火設備の事故で注意喚起(更新)
不適切な取り扱いで中毒、酸欠などの人的被害発生
経済産業省と高圧ガス保安協会(KHK)高圧ガス部は、東京都港区と愛知県名古屋市で発生した2つの二酸化炭素消火設備による3名の死亡を含む人的被害のある事故を受けて、二酸化炭素消火設備を設置者に対し、十分にその危険性を認識したうえで、注意事項、安全な取扱いなどの周知徹底を行うよう注意喚起を行った。
問題となった事故は、2021年1月23日(土)に東京都港区のビル地下駐車場で、作業員が二酸化炭素消火設備の点検作業を行っていたところ、二酸化炭素が放出し2名が死亡した事故と、2020 年12 月 22 日(火)に愛知県名古屋市のホテルにある機械式立体駐車場で、立体駐車場のメンテナンス作業中に、二酸化炭素消火設備がなんらかの理由により起動し、二酸化炭素が放出され、1名が死亡、10 名の重軽傷が発生した事故の2つ。
二酸化炭素消火設備は電気設備が設置されている施設、多量の火気を使用する施設または機械式立体駐車場など、様々な場所で使用されている。消防法で安全に対する技術上の基準が定められている信頼性の高い消火設備だが、不適切な取り扱いをすると、中毒、酸欠などの人的被害がある事故につながる場合がある。
KHKでは二酸化炭素消火設備の設置者に対する注意喚起として、「十分にその危険性を認識したうえで、関係者(その設置場所付近で工事やメンテナンスなどを行う方々を含む。)に対し、注意事項、安全な取扱いなどの周知徹底をお願いします」と呼びかけている。
二酸化炭素消火設備は、高圧ガスである二酸化炭素(液化炭酸ガス)を利用しており、高圧ガス保安法における高圧ガスの貯蔵と消費の規制を受ける。そのため、事故が発生した場合、高圧ガス事故として取扱われることになる。
また、KHKの高圧ガス事故事例データベースには、機械式立体駐車場などに設置された二酸化炭素消火設備に関連し、同様の事故が登録されているとして、次のように一部を抜粋、要約して紹介した。
- 炭酸ガス噴出による酸欠中毒(1979 年6 月 14 日に兵庫県で発生。重傷1名、軽傷5名):ビル地下駐車場で消防職員らが消火用の炭酸ガスボンベ貯蔵の点検作業中、天井の噴出口から突然炭酸ガスが噴出、酸欠状態で倒れた。
- 炭酸ガス噴出による酸欠死(1993 年10 月 12日に東京都で発生。死者1名): ビル1階で配線工事中に、堀削機が配線を切断したため、地下に設置されていた消火用炭酸ガス容器の放出用作動弁が作動し、炭酸ガスが放出した。電気関係の保守点検にあたっていた従業員が死亡。
- 消火設備からの炭酸ガス噴出(2000 年 8月 1 日に新潟県で発生。軽傷3名):下水処理場で消火設備の作動試験をするため、1 本の容器を使ってガスを放出させた。新しい容器と交換した際、容器の破裂板を作動させるためのカッターを突出た状態のまま容器をセットしたためガスが噴出し作業員 3 名が凍傷を負った。
- 立体駐車場消火用液化炭酸容器からの漏えい(2008 年2 月 12 日に北海道で発生。軽傷1名):共同住宅に隣接する立体駐車場において、当該駐車場内に設置されている二酸化炭素消火設備の誤作動により、二酸化炭素が駐車場内に放出され、駐車場にいた住民の具合が悪くなり、救急搬送された。
- 不活性ガス消火設備の誤操作によるCO2漏えい(2010 年6 月 8 日に東京都で発生。重傷2名、軽傷2名):機械式駐車場で、消防用設備である「不活性ガス消火設備」(二酸化炭素)の点検中に、誤って二酸化炭素消火ガスを機械式駐車場区画内に放出させてしまい、人的被害が発生した。
KHKでは、高圧ガス事故事例データベースには上記の他にも、二酸化炭素消火設備に関連する事故が登録されているとして、過去に発生した高圧ガス事故の情報を確認し、高圧ガス事故の未然防止に活用することを勧めている。さらに、関連する他法令(消防法、労働安全衛生法など)の情報収集、活用についても要請した(一例、「横浜市 不活性ガス消火設備、ハロゲン化物消火設備などのガス系消火設備を設置している建物の関係者の皆様へ」)。