日本酸素HD 2022年3月期通期連結決算(IFRS)

2026年3月期までの4か年の中期経営計画「NS Vision 2026 – Enabling the Future」を策定

 日本酸素ホールディングス(日本酸素HD)の2022年3月期通期連結決算(IFRS)は、売上高9571億6900万円(前期比17.0%増)、コア営業利益1027億1000万円(同17.7%増)、営業利益1011億8300万円(同13.9%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益641億0300万円(同16.1%増)となった。年間配当は34円で前期比4円の増配。

 当期の業績は堅調な経済回復に支えられ、すべての事業セグメントが改善した。その結果、セパレートガス(酸素、窒素、アルゴン)の出荷数量は、前期に比べて大きく増加した。一方、電力、原油、液化天然ガスの価格上昇、サプライチェーンの混乱、及び全世界レベルで諸物価の上昇が継続しコストが上昇したが、各セグメントでの販売価格の見直しや原価・諸経費の削減努力を行った。

セグメント業績

 セグメント利益はコア営業利益で表示。

日本ガス事業

 売上収益が3720億3300万円(前期比8.8%増)、コア営業利益が309億3900万円(同3.5%増)。

 産業ガス関連では、主力製品のセパレートガス売上収益は、全般的に関連業界での生産活動が回復し、前期に比べ大きく増加したことに加え、LPガスの出荷数量が減少したものの、仕入価格が大幅に上昇したことで販売単価も連動して上昇し、増収となった。機器・工事では、医療向け関連機器を含めて全般的に好調だった。エレクトロニクス関連では、電子材料ガス及び関連機器・工事が、ともに増収となった。

米国ガス事業

 売上収益が2248億0100万円(前期比18.3%増)、コア営業利益が273億1400万円(同18.1%増)。

 セパレートガス売上収益は、バルクガスを中心に生産活動の回復により、大きく増加した。また、炭酸ガスの販売も好調だった。機器・工事では、前期に需要が冷え込んだ溶接・溶断関連機材が回復し、大幅に増収となった。エレクトロニクス関連での売上収益も増加となり、堅調に推移した。加えて、期初から物流費やエネルギーコストの上昇の価格転嫁を進めたことも増収の要因となった。

欧州ガス事業

 売上収益2097億7800万円(前期比31.1%増)、コア営業利益263億円0300万円(同25.2%増)。

 前期は、新型コロナウイルス感染症の拡大による深刻な影響を受けたが、当期では一貫して堅調な経済回復が見られた。また、第2四半期に始まった記録的なエネルギーコストの急激な上昇は、第4四半期にかけて加速したが、価格転嫁やコスト削減努力により対応した。加えて、価格転嫁を進めた結果、大きく増収となった。

アジア・オセアニアガス事業

 売上収益は1235億3300万円(前期比21.1%増)、コア営業利益は128億3700万円(同43.9%増)

 産業ガス関連では、関連業界での生産活動が回復したことで、主力製品のセパレートガスの売上収益は増加した。主に豪州地域での販売が多くを占めるLPガスは、仕入価格の上昇による販売単価の上昇と出荷数量が堅調に推移し、増収だった。エレクトロニクス関連では、東アジアでの電子材料ガスは増収。また、機器・工事では、産業ガス関連で増収となった。

サーモス事業

 売上収益268億4900万円(前期比12.0%増)、コア営業利益が64億4100万円(同24.6%増)

 国内では、ケータイマグやスポーツボトルの出荷数量が前期から回復し、売上収益は大きく増加。また、自宅で過ごす時間の長い新たなライフスタイルが浸透したことに関連し、前期に続き、フライパンやタンブラーの販売数量は増加した。海外では、販売地域での景気回復により出荷数量は増加した。

今後の見通し

 2023年3月期から2026年3月期までの4か年を対象期間とした中期経営計画「NS Vision 2026 – Enabling the Future」を策定した。同計画では、日本酸素ホールディングスグループの5つのセグメントを構成する産業ガスのグローバル4極とサーモスという事業運営体制のもと、5つの重点戦略「サステナビリティ経営の推進」「脱炭素社会に向けた新事業の探求」「エレクトロニクス事業の拡大」「オペレーショナル・エクセレンスの追求」「新しい価値創出へとつながるDX戦略」を定め、グループ総合力の強化と更なる成長をめざし、人・社会・地球にとって豊かで明るい未来の実現に貢献する。

 日本酸素HDが事業を展開する地域においては、おおむね事業環境は好調に推移しており、産業用ガス需要は、2022年3月期以降も好調なトレンドが続いている。ただし、昨今の地政学リスクの高まりを背景としたエネルギーやコモディティなどの資源価格の高騰、インフレの長期化やサプライチェーンの混乱など、経営環境は以前にも増して不確実性が高まっている。実際の業績等はこれらの要因により中期経営計画の見通しから変動する可能性がある。

 2023年3月期の産業ガス事業は、エレクトロニクス分野の継続的な成長、食品、飲料、医薬品、ヘルスケアなどレジリエンス市場への注力による成長を見込む。2022年3月期から始まった世界的なエネルギー価格の高騰は、少なくとも2023年3月期第2四半期連結会計期間までは、特に欧米セグメントで継続すると予想、第3四半期連結会計期間以降は徐々に適正価格に戻るとみており、売上収益は前期比で小幅に減少する予定。

 一方、コア営業利益は販売数量の増加、積極的な価格改定の継続、生産性向上及びコスト削減施策により増加する見込みとした。また、サーモス事業は新型コロナウイルス感染症の拡大による、屋外での消費者行動の制限が収益に大きく影響を受けてきたが、2023年3月期は制限解除に伴う消費マインドの回復を背景に業績は改善する見込み。

 2023年3月期の連結業績予想は、売上収益9500億円(前期比0.7%減)、コア営業利益1070億円(同4.2%増)、営業利益1075億円(同6.2%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益670億円(同4.5%増)を見込む。主要通貨の米ドル・ユーロの想定為替レートは、 それぞれ115円/米ドル、125円/ユーロ。年間配当は中間配当が2円増配の18円、期末配当は18円を維持し、年間配当は36円(前期比2円増配)を予想する。