岩谷産業と大林組 国内初、液化水素の冷熱を建物に利用する実証に着手
液化水素の新たな利用方法の創出を目指す
岩谷産業は、株式会社大林組(本社:東京都港区、社長:蓮輪賢治)と共同で、国内有数の水素エネルギーの研究開発拠点である中央研究所・岩谷水素技術研究所において、建物への液化水素冷熱を利用した、日本初の実証に着手する。
液化水素は水素ガスを—253℃という極低温にして液化させた状態であり、圧縮水素ガスに比べ密度が高く大量輸送・大量貯蔵に適していることから、輸送効率が求められる産業用途や水素ステーション等に供給されている。液化水素を利用する際には、主に気化器(※1)を用いて常温のガスに戻すが、—253℃の冷熱は利用されず大気に放散されている。今後、岩谷産業が進める「CO2 フリー水素サプライチェーン」(※2)により液化水素の利用拡大が想定されており、冷熱を無駄なく利用する技術開発は、冷却に必要なエネルギー削減を通じて、脱炭素社会の実現に向けた大きな波及効果が期待できる。
今回、実証を開始する中央研究所・岩谷水素技術研究所では、脱炭素社会に向けた“見せる研究開発拠点”を構想しており、併設する水素ステーションに供給する液化水素により発生する冷熱の利用先として、空調冷水、実験機器用冷却水、氷蓄熱(こおりちくねつ)(※3)など、さまざまな冷熱活用手段と方法、用途を開発し実証していく。
大林組は中央研究所・岩谷水素技術研究所や水素ステーションの設計・施工に携わった実績があるとともに、水素による発電や温排熱の利用に積極的に取り組んできた。このようなパートナーシップの中、両社で共同開発を行い、来るべく液化水素大量供給時代を見据え冷熱利用の実用化を目指す。
岩谷産業では、脱炭素社会の実現に向け、CO2 フリー水素の大量調達や利活用、LP ガスのグリーン化、廃プラスチックやバイオガスからの水素・LP ガス製造などさまざまな検討を進めている。本格的な水素社会の実現に向けて、水素の多面的な利用価値を高める取り組みを通じて、脱炭素社会の実現に貢献する、としている。
※1:気化器:液化水素を空気と熱交換することで気化させる機器
※2:CO2 フリー水素サプライチェーン:再生可能エネルギー等のCO2 を排出しないエネルギーを用いて水素を製造し、液化水素等で輸送・供給・利用する一連のサプライチェーン
※3:氷蓄熱(こおりちくねつ):電力の需給調整用に空調用冷水で氷を作って蓄熱し、時間をずらして融解して冷房に利用するシステム