エア・ウォーターグループの桂通商が熊本県玉名市に「熊本低温物流センター」を新設

投資額約6億円、物流2024年問題を見据えた流通改革・コールドチェーンによる青果物流を推進

熊本低温物流センターのイメージ図
熊本低温物流センターのイメージ図

 エア・ウォーターグループは、今後の企業成長に向け、これまでの事業展開で培った農産加工技術と物流インフラの機能を組み合わせることで、フードロスの低減や食料自給率の向上をはじめ、生産者と消費者の視点に立った新しい農産事業のビジネスモデルを構築し、地域の農業振興に貢献していくことを目指している。

 こうした成長方針の下、エア・ウォーターグループの物流事業会社である株式会社桂通商(本社:京都府京都市、以下、桂通商)は、熊本県の主力産業である農業の担い手不足や物流2024年問題といった社会課題の解決を目指し、熊本県玉名市に低温物流センターを建設することを決定した。

 着工は 2023年 6 月、稼働開始は 2024年 2 月を予定する。ドライバー不足などに起因する運べない時代に対応するとともに、コールドチェーンを活かした高付加価値物流を通じて、「地域を起点とする農産流通事業」を推進するとしている。

※物流2024年問題:トラックドライバーの時間外労働時間上限が制限されるなど、トラック運送業界の働き方改革に伴う諸問題

エア・ウォーターグループの農産流通事業の取り組み

 エア・ウォーターグループは、1929 年に札幌で産業・医療用ガスの供給事業を開始して以来、エネルギーや農業・食品、物流など事業領域を広げながら、産業や暮らしを支える様々な事業を展開している。

 グループが有する多様な事業領域と地域の事業基盤を活用し、気候変動や超高齢化といった社会課題を踏まえた 2 つの成長軸である「地球環境」と「ウェルネス」に沿って、事業活動を通じた社会課題の解決により持続的な成長と企業価値の向上を図っていくことを今後の成長方針として定め、その実現に向けた様々な取り組みを推進している。

 その中でも「ウェルネス」領域においては、農産物の調達・加工・販売に至るバリューチェーンと全国をカバーする物流ネットワークを掛け合わせた「地域を起点とする農産流通事業」の構築に注力する。

 具体的には、産地から消費地へ至る流通経路において、いつでも安定した量と品質を届けられる仕組みを構築するとともに、その青果の付加価値を向上させるため、青果物流、食品加工、青果販売などへの事業展開を積極的に進めている。こうした取り組みにより、販路拡大などによる地域農業の振興に加え、規格外農産物の有効活用による廃棄ロス低減、ひいては食料自給率の向上などに貢献することを目指す。

低温物流センター建設の目的

 桂通商は、関西圏に冷蔵倉庫を複数有し、青果物の鮮度を保持した低温保管・輸送を主力の事業とする。現在、熊本県を産地とする青果物の輸送は、大型車両による長距離輸送が主軸。例えば、大消費地である関東までの輸送では、走行距離が片道 1,100 ㎞を超え、その長時間運転はドライバーにとって大きな負担となっている。また、荷積み・荷下ろしなどの荷役作業や長時間の待機など対処すべき課題も山積している。

 こうした中、桂通商は、国内有数の農産地である熊本県内に低温物流センターを建設。県内各地から集荷した青果物を保管し、積み合わせを行う共同センターとしての機能を果たすことで、荷役作業の効率化やトラック積載率の向上を図り、法改正を見据えた持続可能な青果物輸送に対応する。

 また、低温物流センターの整備により、選果後の低温保管による出荷タイミングの調整が可能となるほか、品目ごとに最適な温度管理を徹底し、青果物の品質維持にも取り組む。

 さらに、桂通商が有する京都市、兵庫県西脇市、大阪市の自社物流施設においても、物流中継拠点としての機能整備を進め、大消費地までの長距離輸送における効率的な輸送とコールドチェーンを駆使した付加価値の高い物流モデルを構築する。

 これらの取り組みに加え、将来的には、エア・ウォーターグループが有する農産加工の技術や青果小売のネットワークも活用し、熊本県の農業のさらなる発展と消費地への安定した青果物供給に貢献する。

地域を起点とする農産流通事業の背景

 熊本県農業協同組合連合会(JA 熊本経済連)、熊本県果実農業協同組合連合会(JA 熊本果実連)、エア・ウォーターグループの3 団体は、約3 年に渡り「持続可能な物流体制の構築」、「物流を通じた青果の付加価値向上」「規格外青果の活用」を協議・検討してきた。いずれも農業経営に直結する重要な観点であり、これからも安心して生産活動を続けるには必要不可欠な取り組みになる。これら 3 つの取り組みを通じて、熊本県の一次産業の課題解決に共に挑む。

 「持続可能な物流体制の構築」では、熊本低温物流センターと関西の中継・配送拠点を活用し、物流効率を高めた新しい物流ビジネスモデルを目指す。交通の利便性が高い県北に位置する本施設が稼働することで、熊本県内で低温保管ができるようになる。また、地元の物流会社と連携し、荷積みの効率化や共同輸送による積載率向上などの取り組みを通じて、安定的な幹線輸送の仕組みを構築する。

 「物流を通じた青果の付加価値向上」では、低温物流センターと低温輸送車両を駆使した青果物流のコールドチェーンを確立し、これまで以上に産地から食卓までの流通品質にこだわった取り組みを実現する。さらに、関西圏で有する既存の流通ネットワークを活用することで、青果販売の増加にも貢献する。

 「規格外青果の活用」では、出荷の規格に合わない青果物を活用した商品の開発や販売を通じて、「青果のもったいない」の低減を図るとともに、生産者の所得向上に貢献する。将来的には、本施設の一部を活用した青果加工事業の構築を目指す。

熊本低温物流センターの概要

  • 施設名称 :株式会社桂通商 熊本低温物流センター
  • 所在地 :熊本県玉名市寺田367
  • 敷地面積 :5,804 ㎡
  • 建設面積 :2,434 ㎡
  • 温度帯 :5℃~15℃(チルド倉庫、3 温度帯で対応可能)
  • 投資額 :約6 億円
  • 新規採用 :20 名
  • 着工予定 :2023 年6 月下旬
  • 事業開始 :2024 年2 月(予定)