岩谷産業など5社、豪州クイーンズランド州「CQ-H2 プロジェクト」で基本設計作業を開始

大規模グリーン水素サプライチェーン構築に向け契約を締結

 岩谷産業、関西電力、丸紅の 3 社は、豪州クイーンズランド州政府所有のエネルギー・インフラ企業である Stanwell Corporation Limited(CEO:Michael O’Rourke、以下「Stanwell」)、シンガポールを拠点としたエネルギー・インフラ企業である Keppel Infrastructure Holdings Pte. Ltd.(CEO:Cindy Lim、以下「Keppel」)と共に、クイーンズランド州グラッドストン地区において再生可能エネルギー由来のグリーン水素を大規模に製造し、液化して日本へ輸出及び、同地区のアンモニア合成施設へ供給(一部はオーストラリア国内で地消)するプロジェクト(CQ-H2 プロジェクト:Central Queensland Hydrogen Project(以下「本事業」))について、基本設計作業(以下「FEED」※1)を共同で実施することに合意し、5 月 26 日に契約を締結した。

※1 Front End Engineering Design の略。概念設計・事業化調査後に実施する基本設計(各商務・財務、契約に係る検討含む)のこと。

CQ-H2 プロジェクト:Central Queensland Hydrogen Project 基本設計作業の契約調印式

 クイーンズランド州ブリスベンで行われた契約の調印式では、同州政府のミック・デ・ブレンニ大臣、豪州再生可能エネルギー庁(以下「ARENA」)のアレキサンドラ・マッキントッシュ役員、胡摩窪 在ブリスベン日本国総領事が立ち会った。

 グラッドストン地区は、日本までの距離、豊富な再生可能エネルギー、整備された大型港湾といった点から豪州内で最もグリーン水素の製造及び輸出に適した土地の一つであり、豪州連邦政府の水素ハブにも指定された産業集積エリア。カーボンニュートラル実現のため、CO2 フリー水素源及びその輸出港の獲得競争は世界的に激しさを増しており、日本のエネルギーセキュリティーの観点からも、安価な再生可能エネルギー電源と輸出港の早期確保が必要不可欠だとしている。

 また、クイーンズランド州は、年間 300 日以上晴天が続く気候且つ風況が良く、再生可能エネルギーのポテンシャルが非常に高い地域であり、同州政府は 2035 年までに 25GW の再生可能エネルギーを導入する計画を 2022 年に発表し、グリーン水素製造に必要不可欠な再生可能エネルギー電源の開発と送配電網の拡張が進む予定。Stanwell も、この目標を達成する重要な役割を担っており、既存電源の再生可能エネルギーへの置き換えのみならず、本事業に必要な再生可能エネルギーの安定供給に向けた活動を進めている。

 このような背景から、岩谷産業、関西電力、丸紅及び Stanwell は、2021 年から大規模なグリーン液化水素の製造及び日本への輸出に向けた事業化調査(FS)を行ってきたが、この調査結果を踏まえ、最終投資判断に向けた検討を本格的に実施すべく、今回新たなグリーン水素の引取先候補であるKeppel を交え、5 社で FEED を進めることに合意した。

 FEED 総額は 117 百万豪ドル(約 105.3 億円※2)を想定し、ARENA から 20 百万豪ドル(約 18.0 億円※2)の補助を受ける予定となっている。(※2 為替:1 豪ドル=90 円で計算)

 本事業は、長期に亘り安定的かつ安価なグリーン水素の製造及び供給を行うことを目指しており、2028 年頃に 200t/日(約 7 万 t/年相当)、2031 年以降に 800t/日(約 26 万 t/年相当)のグリーン水素製造規模を想定する。

 製造したグリーン水素を液化・貯蔵する施設の開発を含み、2030 年頃から段階的に液化水素の製造・供給を開始、製造された液化水素については、引取先候補である関西電力にて姫路エリアの火力発電所や周辺の需要家への供給を検討する予定。

 また、製造したグリーン水素の一部は 2028 年頃から Keppel 及び豪州の化学メーカーである Incitec Pivot Limited が検討を進めているアンモニア合成施設に供給される計画となる。Keppel は、シンガポールで新たに建設中の自社の水素混焼発電所向けだけではなく豪州国内の需要先に向けてもグリーンアンモニアの供給を検討する。

 グリーン水素の製造規模については、引取先候補である関西電力及びKeppel の希望に応じて段階的に供給能力を拡大する。

 グリーン水素製造プラントは、グラッドストン地区のアルドガ地域にStanwell が確保している土地(約 235 ヘクタール)を活用し、水素液化・積荷プラントについても同社が確保しているグラッドストン港のフィッシャーマンズランディングの土地(約 50 ヘクタール)を活用する予定。これら 2 つの拠点は、全長約 25 ㎞の水素ガスパイプラインで接続される計画となる。

 FEED では、最終投資判断に必要な検討を網羅する為、各種設計・精緻なコスト検討のみならず、事業化に必要な各種契約書の作成、建設・開発に向けた許認可取得、資金調達方法の確定を行う。

 各社は本事業の活動を通じて日本、豪州、シンガポール各国政府が掲げる大規模水素・アンモニアサプライチェーンの構築に向けた先駆者として尽力すると共に、カーボンニュートラルの実現に貢献するとしている。

関連プレスリリース

・岩谷産業、関西電力、丸紅「日豪間での大規模なグリーン液化水素サプライチェーン構築に向けた事業化調査の実施 ~日豪 6 社で覚書を締結~」(PDF)

https://www.iwatani.co.jp/jpn/news/files/2021/jpn_newsrelease_detail_1408_1.pdf