カーボンニュートラル実現に向け、水素・燃料電池展「H2&FC EXPO」開催(2)

帝人・帝人エンジニアリングが可搬型燃料電池と蓄圧容器ユニットによる水素アプリケーションの提案

帝人・帝人エンジニアリングブース
帝人・帝人エンジニアリングの共同ブース

 水素・燃料電池の展示会「H2&FC EXPO」に共同出展した帝人・帝人エンジニアリングは、独自開発の可搬型燃料電池とFRP複合容器「ウルトレッサ」を用いた圧力容器のユニットによる、水素利用の新しいアプリケーション提案を行った。

 展示された燃料電池ユニットには、帝人が国内で代理販売を行う英国Intelligent Energy Limitedの新型燃料電池「IE-LIFT 1T」を採用し、小型・軽量化を実現した。圧力容器ユニットに帝人エンジニアリングの炭素繊維を使用した圧力容器「ウルトレッサ」を3本搭載、両ユニットともにキャスター付きのためどこへでも運搬可能な水素燃料電池による電力供給システムとなる。水素燃料電池で発電するため、一般的な軽油やガソリンを使用する発電機と比べ、低騒音で排ガスの臭いもなく、二酸化炭素などの温室効果ガスを排出しない。こうしたメリットを活かし、夜間の工事現場や、災害時の非常用電源などの用途を想定し、すでに実証試験が行われている。

 2023年6月~7月には、東京・渋谷区の建設工事現場において、東急建設と共同でコンセプトモデルによる有効性と有用性の検証を、再エネによる電気分解で生成した「グリーン水素」を利用して実施した。夜間工事に必要な照明や警告板の電気設備の電源として使用し、累計10時間の使用で同出力のガソリン発電機と比較して、二酸化炭素排出を約6キロ削減し、運転音約60デシベル(ガソリン発電機は約80デシベル)と騒音を低減できた。また、作業性と運搬性では両ユニットとも特殊な機材無しで人の手による作業が可能で、工事現場での可搬性に優れ、安全に運搬できることを体感したとしている。

 この他、帝人エンジニアリングは、FRP複合容器「ウルトレッサ」の水素用途展開として、2024年販売予定の高圧ガス保安協会(KHK)の認可を取得した水素大型可搬容器「ALT1096」(TypeⅢ、最高充填圧力:45MPa、内容積:130L)を展示、バラ積みやカードルによる水素ガスの供給を提案した。米国複合材料容器メーカのLUXFER Gas Cylinders(本社:米国カルフォルニア州)が新規開発を行い、高圧ガス保安法に基づく認可を取得した。容器に専用プロテクターを装着することで単独で縦置き使用ができ、LGC容器と同じように運搬可能なサイズと重さとなっているため、水素を身近で使用するのに役立つとしている。また、複数本を用いてカードル化することもでき、従来の鋼鉄製カードルよりも重量を大幅に軽量化することができる。

ユタカ、ハマイ、新コスモス電機が圧力調整器や水素センサの展示

 「H2&FC EXPO」では、高圧ガス関連機器メーカーのユタカ、ハマイ、新コスモス電機などが、それぞれ自社製品の圧力調整器や水素燃料バルブ、ガス混合装置、ガス検知警報器の紹介を行った。

 圧力制御機器を製造するユタカは、水素ステーション向けの超高圧(82MPa)対応の圧力調整器、圧力リリーフ弁、過流防止弁などの展示のほか、新製品の理化学用小型二段式圧力調整器「GBM2/GSM2」を出品した。超小型・軽量化した圧力調整器で省スペース、小型容器に最適。ボンベの残圧が低下した際の出口圧力の変動を抑え、安定してガスを供給する。

 産業用・総合バルブメーカーのハマイは、水素燃料電池自動車用バルブ類やドイツWEH社製の水素充填ノズルを展開した。また、今後増大することが見込まれる水素サプライチェーン需要に対応する、圧縮水素運送自動車(水素トレーラー)用手動弁やエンドボスPRDなどを展示。

 ガス検知警報器の新コスモス電機は、水素・アンモニア・メタンなどカーボンニュートラル実現のためのクリーンエネルギーの安全な利用に貢献するガス検知器、探知器を出品した。トヨタ自動車の燃料電池自動車、新型ミライに採用された車載用水素ディテクタをPRした。ミライの前部コンパートメントや水素タンクなど3か所に水素ディテクタを設置、一定濃度以上の水素漏れを感知した場合にメーター内の警告灯で告知する。