鉄道総研が伊豆箱根鉄道で、世界初の超電導き電システム送電の営業線運用検証
液体窒素 (-196℃以下) で超電導状態を維持、3,000 A以上の電流を電気抵抗ゼロで損失なく送電
公益財団法人鉄道総合技術研究所(以下、鉄道総研)は、伊豆箱根鉄道株式会社・ 駿豆線において、世界で初めてとなる超電導き電システムでの営業線運用での技術検証を開始した。営業線運用検証における、同システムの鉄道事業用設備としての利用については、国の認可を受けている。
超電導き電システムは、 電車の走行のために必要な電力を一定温度以下で電気抵抗がゼロになる超電導現象を利用した超電導線送電により、き電線などに供給するもの。このシステムの利用により、現在の送電損失の発生や電圧降下など送電時の電気抵抗に起因する課題を解決し、損失のない送電による省エネルギー化や変電所の集約や削減による省設備化を進めるための手段として期待されている。
鉄道総研では2007年からこのシステムの開発に取り組んでおり、これまで所内及び実路線での車両走行試験などを行ってきた。本格的な実用化と普及に向けては、営業列車負荷への適用性と信頼性など実運用における課題の抽出・解決が必要となっていた。
営業線運用検証の概要
- 期間: 2024年3月13日から2024年度中を予定。
- 箇所:伊豆箱根鉄道株式会社・ 駿豆線 大仁駅構内
- 概要:超電導ケーブル(長さ 102m)と冷凍機や冷媒を循環するポンプによる冷却システムを設置し、 液体窒素 (-196℃以下) を冷媒として超電導状態を維持し、本線で要求される 3,000 A以上の電流を電気抵抗ゼロで損失なく送電する。一日あたり上り方面 67本、 下り方面 68本、 合計 135 本の営業列車に電力を供給。
本研究は、 国土交通省の鉄道技術開発費補助金を受けて実施した。超電導き電システムの研究開発は、これまで国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)の 「戦略的イノベーション創出推進プログラム (S-イノベ)(JPMJSV0921)」・「未来社会創造事業(JPMJMI17A2)」、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO) の委託・助成事業を受けて実施した。