施設園芸・植物工場のCO₂局所施用や陸上養殖向け酸素供給の提案

オムニア・コンチェルト、岩谷産業、コフロックなどが出展

 施設園芸と植物工場の専門展示会「GPEC」と「アクアポニックス・陸上養殖設備展」が、2024年7月24日~26日、東京ビッグサイトで開催され、併催の「スマートアグリ ジャパン」を含めて200社以上が出展し、3日間の登録者数は16,261名を数えた。収穫量増加、生産物の品質向上、経営効率化につながる機器・資材・サービスの提案が行われ、産業ガス関連では岩谷産業が酸素供給からFRP水槽、水温維持までの陸上養殖プラント向け製商品を紹介、ガス発生装置のコフロックが水産向けに屋外設置対応の酸素ガス発生装置「GENE-BASE Series」の実機展示を行った。また、「オムニア・コンチェルト」がCO2局所旋用のコントローラーや環境統合制御システムによる、より効率的な作物育成の提案などを行った。

「施設園芸・植物工場展(GPEC)」「アクアポニックス・陸上養殖設備展」「スマートアグリ ジャパン」
「施設園芸・植物工場展(GPEC)」「アクアポニックス・陸上養殖設備展」「スマートアグリ ジャパン」

 株式会社オムニア・コンチェルト(本社:東京都港区高輪、藤原慶太代表取締役)は、農林業向けにCO2局所施用などの環境制御盤のシステム開発・製造・販売を行う。事業内容は森林再生事業や技術開発受託、農福連携事業と幅広く、取扱い製品もCO2局所施用コントローラーから、農業用環境統合制御機器、環境監視制御システム、しいたけ周年栽培システム、縦型水耕栽培ユニット、農林業用木製ハウス、いちご専用土など、多様なサービスを提供する。

 CO2局所施用は、ハウス内の作物にCO2を居所的に放出することで光合成を活発化し、成長を促進させる方法で、タッチパネルで操作できるコントローラーとCO2や温度・湿度を計測する専用センサBOX、CO2放出の圧力や流量を調整して効率よく施用を行うバルブユニットなどを設置、液化炭酸ボンベからCO2を供給し、CO2濃度を上げたい場所へ局所的に多孔質チューブを配置してCO2を放出する。従来の化石燃料を燃焼させてCO2を発生させる方法と比較して、大気放出されていたCO2を分離回収して製造される液化炭酸ボンベを使用することで、最終的な二酸化炭素排出量を低減できることや、温度上昇がないためハウス内の温度を適温にコントロールしやすいというメリットがある。

 コントローラーは、制御エリアが2つのコンパクトタイプから、エリアやセンサ数、接続バルブ数のほかCO2以外のAirやLED照明、液肥のpH制御など様々な条件に応じたタイプを用意。出展ブースでは、最大20か所のハウスを有線・無線で個別に独立制御するような大規模な施設全体の環境統合制御ができる「コンチェルトOCES-1000」で、CO2とAir制御にはじまり、遠隔監視・操作、監視カメラやサーモグラフィとの連携、LED照射管理、灌水システム制御などの提案を行った。

 「アクアポニックス・陸上養殖設備展」に出展した岩谷産業は、液化酸素タンクによる酸素供給、高濃度酸素溶解装置「酸素ファイター」や、水温維持のためのLPG・LNGの安定供給、FRP飼育水槽などを出品して国内でも広がりを見せている陸上での魚介類の養殖での産業ガス関連技術の活用をPRした。また、NTTコミュニケーションズとの連携による水温や塩分濃度などのデータをドコモのネットワーク経由でスマートフォンで確認する「ICTブイソリューション」による陸上養殖の見える化提案や、バナメイエビの「スマート養殖」で岩谷産業やドコモと連携するリージョナルフィッシュ株式会社のゲノム編集による超高速の魚介類の品種改良の紹介も行った。

 「酸素ファイター」は、酸素ガス中に水を送るという逆転の発想から生まれた高濃度酸素溶解装置で、自然環境下で溶存酸素量が最も多い14.16ppm(水温0℃)を大幅に上回る20~40ppm超の溶存酸素濃度を実現できる。酸素ガス中に水を送り込んで、酸素を溶解させるため、従来の水の中に酸素を送る曝気装置で発生する気泡(=ロス)がほとんどなく、溶解の過程で無駄に酸素ガスをロスしないためランニングコストの低減が可能。販売開始から30年以上の実績があり、うなぎ・エビ・サーモン・サバなど養殖における餌食いの向上や過密飼いに効果があるだけでなく、排水処理(活性汚泥法)や河川の浄化、水耕栽培にも応用されている。

 「ICTブイソリューション」は、センサーで飼育水槽の水温・塩分濃度・クロロフィルや溶存酸素量を時間ごとに自動で計測し、ドコモの通信ネットワークを使用して計測データをクラウドに送信する。専用開発による制御ボックスで「酸素ファイター」とも接続し、スマホアプリで情報の確認ができるだけでなく「酸素ファイター」のコントロールも自動で行うことで溶存酸素量を常に適正に保つ。岩谷テクノ製の養殖向けFRP水槽は、保温材をFRPで挟むサンドイッチ構造により断熱性に優れ、水温維持に必要な電気代を半分まで削減できるとしている。継ぎ目のない製造方法で水漏れの発生を防止し、1トン以下~数千トンまでのオーダーメイド製作が可能。

 マスフローコントローラーや流量計、各種ガス発生装置を製造するコフロックは、陸上養殖向けに生簀内の溶存酸素濃度の維持に使用される屋外型の酸素ガス発生装置「GENE-BASE Series」の実機を展示した。屋外・屋内向けに250件以上になる国内水産養殖向け酸素ガス発生装置導入実績の事例を紹介して、ボンベや液体酸素による酸素ガス購入と、電力で空気から酸素ガスを発生させるPSA方式の「GENE-BASE Series」とのコスト比較によるガス代削減の提案を行った。

 「GENE-BASE Series」はガス発生装置のコフロックと、コンプレッサの北越工業が共同開発したもので、酸素ガス発生装置のほか、窒素ガス発生装置とクリーンドライエア(CDA)発生装置の3タイプがある。屋内外の設置に対応し、屋外では45℃の高温環境下でも連続運転が可能、防水性能はIPX3相当でトップカバーやドアの特殊シールや密閉型ロック構造など、雨水の侵入を最小限にする屋外専用ボンネットを採用した。装置内にコンプレッサを内蔵しているため、コンプレッサ室などの建造物が不要で設置コストの大幅な削減が見込める。建物の屋上や階段下への設置など、空きスペースの有効利用によって様々な陸上養殖設備への導入が容易となっている。

 酸素ガス発生装置のガス吐出圧力は0.2から0.5MPaまでをラインナップ、ガス純度は90%以上でガス発生量4.2~6.0Nm3/hの7.5kWタイプと、ガス発生量13.0~18.0Nm3/hの22kWタイプがある。22kWタイプの酸素ガス単価は31.2~43.2円/Nm3(メンテナンス+電気代で算出)で、年間のガス使用量16Nm3/h、純度90%、稼働時間24h×365日の場合に、液体酸素(ローリー)とのコスト比較では約629万円/年の削減が可能としている。