大陽日酸イノベーションユニット、化合物半導体製造装置や安定同位体、金属AM、エレクトロニクス向け特殊材料、バイオテクノロジー事業で未来への挑戦

産業ガス起点のコア技術とオープンイノベーションによる新しい価値の創造を加速

金属3Dプリンターによる造形物
金属3Dプリンターによる造形物

 大陽日酸は産業ガスを起点とする自社保有のコア技術と、パートナー企業とのオープンイノベーションで獲得した製品・技術との連携による次世代の新しい価値創造を目指し、イノベーションユニットの3つの事業部(SI事業部・イノベーション事業部・CSE事業部)では、化合物半導体製造装置や安定同位体、金属積層造形(AM)、エレクトロニクス向け特殊材料、バイオテクノロジーなどの分野でグローバルな事業拡大を推進している。

 最近では、2025年3月に無細胞タンパク質合成技術を活用した再生医療用製品、酵素などの機能性タンパク質生産の技術開発を目的として、神奈川県横浜市鶴見区末広町に位置する「横浜バイオ産業センター」内にSI事業部開発拠点を新設した。拠点周辺には理化学研究所やバイオに関わる研究拠点、企業、研究者が集積しており、今後は各研究機関や企業との共同開発も行う。

 また、原料に有機金属やガスを用いながら基板上に化合物半導体の成膜を行う「MOCVD装置」を開発するCSE事業は、米国サウスカロライナ大学とスウェーデンのLund大学において大陽日酸製の化合物半導体製造装置の採用が決定するなど、パワーエレクトロニクス向けに今後成長が期待される化合物半導体市場で、積極的な事業展開を進めている。

開花期を迎えたイノベーション事業、次期中期経営計画で売上倍増を狙う

 イノベーションユニットを指揮する大陽日酸の小林邦裕常務執行役員は、2025年3月26日に行われたメディア向けの事業説明会で「(大陽日酸のイノベーション事業の)売上高はおよそ200億円程度とまだ小さなユニットではあるが、(発足してから)過去4年間の取り組みを通じて認知度の向上に努め、まさに開花期を迎えようとしている。今後はさらにスピードを上げ、2026年4月1日から始まる4年間の新中期経営計画において、大陽日酸のイノベーション事業を数倍に増やす取組みを目指す」と話した。

小林邦裕イノベーションユニット長
小林邦裕イノベーションユニット長

 説明会では、SI(Stable Isotope)事業部が「安定同位体」、イノベーション事業部が「金属3Dプリンター」や「エレクトロニクス向け特殊材料」、「無細胞タンパク質合成」、CSE(Conpound Semiconductor Equipment)事業部が「化合物半導体製造装置によるエレクトロニクスへの貢献」について、それぞれ事業内容や技術を紹介し、さらに未来への挑戦として将来に達成すべき新たな価値創造についてプレゼンテーションを行った。

 現在、酸素の安定同位体事業で世界市場シェア40%を誇るSI事業部では、酸素以外の安定同位体の拡大を目指し、深冷蒸留による濃縮技術をC(炭素)やN(窒素)、H(水素)の同位体製造への拡張に挑戦する。同位体の用途としては、12C量子技術センシングによる生体計測や電池・パワーデバイス計測用の次世代高感度センサー、13C分子プローブによるDNP-MRI・呼気検査の診断プローブへの展開、核融合炉への燃料としての2H(D)、15Nのクリーンエネルギーへの活用が想定されている。

イノベーション事業部のAM事業プレゼンテーション
イノベーション事業部のAM事業プレゼンテーション

 イノベーション事業部では、金属3DプリンターによるAM事業の拡大として、大陽日酸の強みとなるガス技術を起点としたトータルソリューションによる国内No.1の技術インテグレーターを目指す。また、エレクトロニクス事業では、ニッチベスト商材の拡大として重水素化合物の受託合成サービスや、ヒドラジン/過酸化水素の高純度精製技術による半導体グレードの特殊材料を提供。バイオテクノロジー事業では、無細胞タンパク質合成技術の応用としてパートナー企業の技術・機能統合による無細胞合成の特徴を活かした創薬分野向け「細胞成長因子事業」を創出する。

 CSE事業部では、化合物半導体事業の拡大により、窒化ガリウムなどパワーデバイスが必要とされる2つのAI(Automotive IndustryとArtificial Intelligence)となるEV市場と人工知能の分野において欧州での成長を狙う。また、窒化ガリウム材料の活用で液晶の100倍以上の輝度を持ち、従来比1/100の大きさとなることが期待されている「Micro-LED」の生産性と歩留り向上に貢献。さらにAIST(産総研)と共同開発したHVPE装置など40年間の開発経験を活かし、高い効率と耐久性が必要な宇宙向け太陽電池の市場での成長を目指す。