日本酸素HD 2025年3月期通期連結決算(IFRS)

2026年3月期通期業績予想は売上収益1兆2900億円(1.4%減)、コア営業利益1910億円(1.0%増)、減収増益

 日本酸素ホールディングスの2025年3月期通期連結決算は、売上収益1兆3080億2400万円(前年同期比4.2%増)、コア営業利益1891億4900万円(同13.9%増)、営業利益1659億0600万円(同3.6%減)、親会社の所有者に帰属する当期利益987億7900万円(同6.7%減)だった。2025年3月期期末配当金を直近予想の24円から3円増配の27円に上方修正し、年間配当金は51円(前年同期は44円)とした。

 グループ全体における製商品の出荷数量は微減だったが、主力製品であるセパレートガス(酸素、窒素、アルゴン)の出荷数量は前期並みとなった。グループ全体で、コスト上昇による販売価格への転嫁等の価格マネジメント、地域ごとの生産性向上プログラムに取り組んだ。一方、米国で建設を進めていた水素生産設備の建設計画中止に伴い、減損損失が発生した。

 為替の影響については、期中平均レートが前連結会計年度に比べ、米ドルで145円31銭から152円57銭へと7円26銭(同5.0%増)、ユーロで157円72銭から163円66銭へと5円94銭(同3.8%増)の円安となるなど、売上収益は全体で約353億円、コア営業利益は全体で約55億円のプラス影響となっている。

セグメント業績

 セグメント業績は、次のとおり。セグメント利益はコア営業利益で表示。コア営業利益は営業利益から非経常的な要因により発生した損益(事業撤退や縮小から生じる損失等)を除いて算出。

日本

 セパレートガス及び炭酸ガスの出荷数量は減少した。また、電子材料ガスは減収。一方、機器・工事では、産業ガス関連、エレクトロニクス関連共に、中大型案件の工事の進捗に伴う売上等により、増収となった。なお、前期の特定顧客向けにオンサイト供給を担う子会社のジョイント・オペレーション化及び民生用LPガス事業を担う子会社の非連結化による減収影響があった。セグメント利益は、電力代の落ち着きや、機器・工事における売上収益の増加が寄与し、増益。
 売上収益は、4100億0900万円(前連結会計年度比1.1%減少)、セグメント利益は、470億9000万円(同9.5%増加)。

米国

 セパレートガスの出荷数量は微増、価格マネジメントの効果により、増収となった。機器・工事では、産業ガス関連、エレクトロニクス関連共に販売が軟調だった。セグメント利益は価格マネジメントの効果に加え、生産性向上に取り組んだ結果、増益。
 売上収益は、3602億円(前連結会計年度比3.8%増加)、セグメント利益は、597億6100万円(同19.5%増加)。 

欧州

 セパレートガスの出荷数量は前期並み、炭酸ガスは軟調だったが、価格マネジメントの効果もあり、増収。機器・工事では、ガス関連機器及び医療関連機器の販売が好調で増収となった。セグメント利益は、売上収益の増加に加え、生産性向上活動が寄与し、増益。
 売上収益は、3286億0100万円(前連結会計年度比8.6%増加)、セグメント利益は、624億1900万円(同17.2%増加)。

アジア・オセアニア

 セパレートガスの出荷数量は堅調に推移。主に豪州地域での販売が多くを占めるLPガスでは、販売数量が堅調に推移し、増収だった。エレクトロニクス関連では、ガス・機器共に増収となった。一方、セグメント利益は、豪州における人件費及び物流費の上昇、ヘリウムの供給過多による一部地域での販売価格の軟化もあり、減益だった。また、豪州における買収事業の取得関連費用を第4四半期に計上したことも減益の要因。
 売上収益は、1765億3800万円(前連結会計年度比10.1%増加)、セグメント利益は、150億4700万円(同5.6%減少)。

サーモス

 日本では、機能的でスタイリッシュなデザインの新製品の上市もあり、ケータイマグの販売は堅調、また、韓国の販売は前期並みで増収となった。セグメント利益は、引き続き円安に伴う製造コストの増加の影響を受けたが、コスト低減に努め、増益となった。
 売上収益は、325億9300万円(前連結会計年度比5.9%増加)、セグメント利益は、62億8600万円(同12.9%増加)。

今期の見通し

 2026年3月期の産業ガス事業では、食品・飲料、医療といったレジリエントマーケットへの注力による成長のほか、カーボンニュートラル社会の実現に向けて取り組む顧客とともに新たな事業機会を探求する。また、エレクトロニクス分野では、顧客の生産、需要、設備投資計画に合わせて対応する。

 地政学的問題を背景とした2022年3月期から始まった世界的なエネルギー価格の上昇による厳しい事業環境は、徐々に緩和しているが、地域により状況が異なるとともに、依然として今後のエネルギー価格を見通すことは容易ではない。引き続き、適切な価格マネジメント、さまざまな生産性向上への取組みに、グループ全体で注力する。

 また、サーモス事業は、物価上昇による原材料価格の上昇は継続する見通し。新たなデザイン、あるいは食洗器対応シリーズ等の機能性を高めた新製品の販売や、調理器具を含む製品ラインナップの拡充、オンライン通販ビジネスを含む電子商取引(EC)サービスに注力し、業績改善を図る。
 2025年3月期の連結会計年度では、中期経営計画で定めた5つの財務KPI目標(最終年度:2026年3月期)のうち、3つの指標(売上収益、コア営業利益、ROCE after Tax)で上回ったが、今後も顧客の期待に応え、顧客への価値提供、価格マネジメント、生産性向上の取組みを継続し、収益力の強化を図る。 

 2026年3月期の連結業績予想は、売上収益1兆2900億円(前年同期比1.4%減)、コア営業利益1910億円(同1.0%増)、営業利益1910億円(同15.1%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益1160億円(同17.4%増)を見込む。

 主要通貨の米ドル・ユーロの想定為替レートは、 米ドルで141円00銭、ユーロで162円00銭とした。年間配当金予想は、中間配当が前年同期比3円増配の27円、期末配当は27円を維持し、年間配当は54円(前年同期比3円増配)を見込む。