エア・ウォーターとエア・ウォーター北海道、北海道三笠市と包括連携協定を締結

石炭地下ガス化(UCG)による水素製造及び利活用を推進

 エア・ウォーターとエア・ウォーター北海道は、北海道三笠市と包括連携協定を2025年5月23日付で締結した。本協定は、三笠市が持つ再生可能エネルギーや地域資源を有効活用することにより、地域の発展及び脱炭素社会の実現を図ることを目的としている。産業ガス関連技術と地域貢献の取り組みを持つエア・ウォーターグループが、地域資源を活用したブルー水素製造事業への参画を通じて、地域の脱炭素化と活性化に貢献する取り組みとして注目される。

石炭地下ガス化によるブルー水素製造実証を背景に連携深化

 かつて石炭産業で栄えた三笠市には、現在も多くの未利用石炭が賦存(ふぞん:資源や要素などがもともと存在している状態)しており、同市は2008年より未利用エネルギーの有効活用を目指し、石炭地下ガス化(UCG:Underground Coal Gasification)の取り組みを推進してきた。UCGは、地下の石炭に直接着火し、その熱で周辺の石炭をガス化させたものを回収して燃料や水素製造の原材料として利用する技術で、三笠市内の地下に大量に存在する未採掘石炭を活用する。

 現在は、石炭に加え、地域に豊富に存在する木質バイオマスを組み合わせた低炭素な水素製造事業であるH-UCG(ハイブリッド石炭地下ガス化)事業に取り組んでおり、これは2023年にNEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)に採択された「三笠市H-UCGによるブルー水素サプライチェーン構築実証事業」として、三笠市、大日本ダイヤコンサルタント株式会社、室蘭工業大学と共同で進められている。

 今回の包括連携協定では、このH-UCG事業を含む、三笠市の再生可能エネルギーや地域資源である石炭などと、エア・ウォーターグループの持つ経営資源を掛け合わせ、地域課題解決、地域産業振興、脱炭素社会実現を目指す。また、エア・ウォーター北海道は、産業ガス、医療用ガス、LPガス、農業食品を中心とした事業を展開するとともに、北海道の自治体向け寄付金制度「ふるさと応援Hプログラム」等を通じて、北海道の自治体が抱える社会課題の解決と新規事業創出を推進しており、こうした地域との連携強化が今回の協定の背景にある。

水素精製やCO₂分離・回収技術でブルー水素サプライチェーン構築に貢献

 産業ガスメーカーとしてガス関連の技術やノウハウを持つエア・ウォーターは、三笠市が進めるH-UCG実証事業において、H-UCGプロセスで取り出されたガスからの水素精製及びCO₂の分離・回収の実証を担当する。エア・ウォーターは今年度中にH-UCG事業で1Nm³/hの水素精製を実証する予定で、精製された水素は将来的に燃料電池や水素自動車、水素ボイラなどで利用可能とする予定。また、分離・回収されたCO₂については、石炭採掘跡への地下固定化や農業等での有効利用するCCUSを見据えており、事業全体としてCO₂排出量ゼロとなるブルー水素の製造を目指している。

 今回の包括連携協定には、石炭地下ガス化による水素製造及び利活用等の推進、並びにCO₂の削減や処理・利活用、バイオマス・雪氷冷熱等の再エネ利用、農業及び陸上養殖の推進による地域活性化・産業振興、炭鉱採掘跡に滞留する坑内水の熱利活用、ゼロカーボンシティの実現などが連携事項に含まれる。