レゾナック、低炭素水素の「価格差に着目した支援」で川崎プラスチックリサイクル(KPR)による低炭素アンモニア事業拡大

使用済みプラに加え使用済み衣料も原料とし、アンモニア誘導品を繊維メーカーへ供給、衣料の資源循環を実現

 レゾナックは、川崎事業所(神奈川県川崎市)のアンモニア事業において、使用済みプラスチック由来の水素のみを原料とすることで、アンモニアの低炭素化を図ることを決定した。2030年4月からの設備稼働開始を計画する。本施策は、経済産業省の脱炭素成長型経済構造への円滑な移行のための低炭素水素等の供給および利用の促進に関する法律に基づく「価格差に着目した支援」の対象事業として2025年9月30日付で認定された。価格差支援は、レゾナックのアンモニアの需要家である株式会社日本触媒と共同申請した。

川崎プラスチックリサイクル(KPR)プラント
川崎プラスチックリサイクル(KPR)プラント

 現在、レゾナック・川崎事業所では、①「使用済みプラスチックをガス化ケミカルリサイクル(“川崎プラスチックリサイクル(KPR)”と呼称)によって得られる水素(以下、使用済みプラ由来の水素)」及び、②「都市ガスを改質することによって得られる水素」を原料にして、アンモニアを製造・販売している。
 今回、①の「使用済みプラ由来の水素」のみを原料にしてアンモニアを製造することで、国内生産アンモニアの低炭素化を目指す。既存プロセスを基盤としながら、新たなプロセスの開発・導入により、実現する。また、2024年から、使用済みプラスチックに加えて使用済み衣料も原料として実証実験を開始している。これにより、アンモニアの誘導品であるアクリロニトリルを繊維メーカー等へ供給することで、衣料の資源循環の実現も目指す。
 使用済みプラ由来の原料100%化により、副生品である炭酸ガスも含め、低炭素化・資源循環が可能な環境価値の高い製品を供給できることから、事業強化ならびにサプライチェーン全体での産業競争力強化を目指す。
 レゾナックはプラスチックケミカルリサイクルのKPR事業を2003年から推進。KPRは、長期にわたって商業的な安定運転を継続している世界で唯一のガス化ケミカルプラントになる。2023年には使用済みプラスチックを原料の一部とする水素・アンモニア・アクリロニトリルの3製品に対して、ISCC PLUS認証を取得した。本施策導入後も引き続きISCC PLUS認証の取得、ならびにサステナブル製品の継続的な供給を目指す。

 レゾナックグループは、サステナビリティを経営の根幹に据えており、脱炭素社会ならびに資源循環型社会の実現に向けて、企業間の枠を超えた共創を図りながら今後も取り組みを進めるとし、技術の高度化を通じて、さらなる資源循環と脱炭素化の両立を図る。

プラスチックケミカルリサイクル事業(KPR)について

 使用済みプラスチックなどを原料に、高温でガス化して分子レベルまで分解し、水素と炭酸ガスを取り出す。化石燃料を使わずに運転することができ、取り出した水素は主に自社内でアンモニアの原料となり、合成繊維、合成樹脂、化学肥料、火力発電所などの窒素酸化物脱硝材などに使われる。一方の炭酸ガスは、大気中に放出することなくレゾナックのグループ会社のレゾナック・ガスプロダクツでドライアイスや炭酸飲料などの原料として利用される。2022年には累計プラスチック処理量が100万トンを超えた。