大陽日酸が微量のCNTでフッ素樹脂を高機能化、添加量は従来の 1/1000、低コストの製造プロセスを確立

 NEDO のプロジェクトにおいて大陽日酸は、カーボン材料とフッ素樹脂の複合材料の製造工程で独自のカーボンナノチューブ※1(CNT)を用いて、カーボンの添加量を従来の 1/1000 程度に抑えつつ、導電性・熱伝導性・機械特性を備えた高機能フッ素樹脂を開発した。さらに、簡便かつ低コストの高機能フッ素樹脂製造プロセスを確立したことにより、従来と同等の製造コストを実現した。

 大陽日酸では、開発した高機能フッ素樹脂サンプル素材について、年間 10t の製造体制を確立し、2014 年 10 月からのサンプル販売を開始する。

 カーボン材料と樹脂の複合材料は帯電防止のための導電性、成形加工ならびに切削加工時の際に熱膨張を避ける目的で高い熱伝導性などの特性が得られることから、半導体部品、自動車部品など多くの分野での応用が期待されている。
 従来技術で最もフィラーとして使われているカーボン材料はカーボンブラック(CB)だが、例えば帯電防止機能を与えるために樹脂にカーボンブラックを 5~15wt%程度も添加する必要があり、成形加工不良や樹脂本来のしなやかさが損なわれる問題がある。また、半導体分野では、カーボン材料の発塵によるコンタミのリスク低減要求が厳しく、カーボン材料の添加量をさらに低減させ、樹脂本来のしなやかさを維持し、かつ発塵リスクの少ない複合材料が求められている。

 今回の成果は次の 2 点となる。① CNT を用いることにより従来の部材に比べて1/1000 程度のカーボン材料添加量で、導電性・熱伝導性・機械特性を備えたフッ素樹脂の開発に成功、②工業向けの簡便かつ低コストなプロセスにより従来の導電性フッ素樹脂と同等コスト実現。

 繊維長の長いカーボンナノチューブ※1(50~150 µm 以下、CNT) とフッ素樹脂(PTFE、平均粒径 25 µm)を高度に複合化することで、CNT添加量0.01wt%において帯電防止レベルの導電性2.4×107Ω・cm、CNT添加量 0.05wt%において母材樹脂の 2.6 倍の熱伝導率0.64W/(m・K)、CNT 添加量 0.1wt%において、母材樹脂に比べ、11%の曲げ強度・圧縮強度向上を達成した。

 今後は確立した高機能フッ素樹脂製造プロセスにおいて、スケールアップ設備を導入し、実証試験を実施。大陽日酸では2014年10月に、10ton/年の高機能フッ素樹脂のサンプル製造体制を確立し、サンプル販売開始を目指す。

【参考:用語解説】
※1 カーボンナノチューブ:炭素によってつくられる六員環ネットワークが同軸管状になったもの