大陽日酸、導電性フッ素樹脂コーティング材開発に成功

 大陽日酸は、ステンレスタンクなどの基材表面に導電性を持ったフッ素樹脂コーティング膜を形成することが可能な導電性フッ素樹脂コーティング材の開発に成功した。

 半導体分野や化学分野においては、酸塩基液体あるいは有機溶剤のような腐食性が高い液体が使用されており、これらの液体による腐食を防止するために、液体が接触する部位(例えばタンク、金属配管やバルブ等の流路)にフッ素樹脂コーティング膜を設けて保護している。このフッ素樹脂コーティング膜は耐薬品性および耐熱性に優れるが、絶縁体であるため液体が流れることで静電気を帯び、それが放電することでフッ素樹脂コーティング膜が破壊され、液体に金属成分が混入する等の問題が発生する場合がある。このため、静電気の発生が抑えられる導電性を持ったフッ素樹脂コーティング膜が望まれていた。

導電性フッ素樹脂コーティング材
導電性フッ素樹脂コーティング材

 大陽日酸は、高い導電性を備えた長尺カーボンナノチューブ(以下、CNT)の製造を行っており、極少量の CNT をフッ素樹脂粉末に均一に複合化することでフッ素樹脂に導電性を付与した、高機能フッ素樹脂の製造技術を持つ。今回、フッ素樹脂コーティング膜用のフッ素樹脂ディスパージョンに大陽日酸の CNT を極少量複合化した、導電性フッ素樹脂コーティング材を開発した。
 本製品を基材にコーティングすることで、帯電防止レベル(10^2~10^4(Ω/□))の導電性を持ったコーティング膜を作製することができる。また、本コーティング膜は厚み方向にも導電性を有しているため、膜の表面と基材外表面で導通をとることも可能。さらに、極微量の CNT を複合化させているため、カーボンの脱落リスクも極めて低く、導電性かつクリーンなフッ素樹脂コーティング膜の形成が可能となる。

 大陽日酸では半導体分野や化学分野で使用されている装置、設備(タンク、テーブル、バルブ等)および部品(配管、継手等)への利用を想定し、山梨研究所でサンプル試作体制を整えており、今後、顧客への紹介およびサンプル提供を進め、本格的な商品化を進める。

【導電性フッ素樹脂コーティング材仕様】

項目        仕様

樹脂種 :ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)

溶媒:        水

表面抵抗率:  10^2~10^4Ω/□

※アルミ基板上に本コーティング材を塗布し焼成した後のコーティング膜の代表値