三菱化学と大陽日酸、米国でバイオエタノール製造向けゼオライト膜のマーケティング開始

 三菱ケミカルホールディングスグループの三菱化学(本社:東京都千代田区、社長:石塚 博昭)と大陽日酸は、バイオエタノール製造プロセス向けに、三菱化学が開発したゼオライト膜(ZEBREXTM)を用いた脱水システムのマーケティングを、米国において共同で行う。
 三菱化学がゼオライト膜エレメント及びモジュールを提供、三菱化学のグループ会社である三菱化学エンジニアリングが脱水システムを製造し、大陽日酸は米国子会社のマチソン・トライガス(Matheson Tri-gas. Inc、本社:米国ニュージャージー州)の販売網を通じて、マーケティングを実施する。

 バイオエタノールは、サトウキビやトウモロコシなどのバイオマスを主原料としており、カーボンニュートラル、かつ CO2の排出抑制につながる燃料として、米国、ブラジルを中心に世界各国で利用が普及しつつある。特に米国においては、1990 年改正大気浄化法、2005 年エネルギー政策法の施行によりガソリンへのバイオエタノール添加が促進されるなど需要増を背景として、現在 215 基のバイオエタノールプラント(計 5,000 万 KL/年)が稼働しており、さらなる新設計画も予定されている。
 バイオエタノールの製造には、原料の粉砕などの前処理、糖化、発酵、精製(蒸留)・無水化などのステップがあるが、原料に水分を多く含むため、中でも蒸留には大きな設備とエネルギーを要する。特に、カリフォルニア州など西海岸ではエネルギーコストが高く、バイオエタノール製造で省エネプロセスが求められている。
 ZEBREXTM は三菱化学が世界で初めて膜化に成功したチャバサイト型ゼオライトで、3.8Åの大きさの揃った孔径を持つため、分離能が高く生産効率を向上させることができる。さらに、従来のゼオライト膜と比較して耐水性に優れているため、耐水性がない従来のゼオライト膜では崩壊してしまうような含水率の高い環境でのエタノール、イソプロパノールと水の分離が可能。
 バイオエタノール製造のプロセスにおいて、上記のゼオライト膜を使用した脱水装置を使用することにより、現在多くのプラントで使用されている蒸留や従来のゼオライトを利用したプロセスと比較して5~10%程度の省エネルギー効果および 10%程度の増産効果が期待できる。

 大陽日酸は米国において、1999 年に子会社であったマチソン社とトライガス社を統合しマチソン・トライガス社を設立。その後も継続して M&A と空気分離装置建設を行い、主要な産業ガス市場を網羅する事業ネットワークを構築している。三菱化学と大陽日酸はこの事業ネットワークを通じてバイオエタノール製造プロセス向けに脱水システムの展開を図る。