コークス炉ガス(COG)に対応する電炉向け多機能酸素バーナ「SCOPE-Jet ®」販売開始
大陽日酸は電炉向け酸素バーナ「SCOPE-Jet®」の性能を向上させ、更に低圧・低カロリー燃料にも対応させた新型「SCOPE-Jet® 」の販売を開始した。
電炉製鋼プロセスにおいて酸素バーナは、1960 年代に急速に普及し、現在では多くの電気炉で設置・使用されている。電気炉での酸素バーナの機能は、炉内のコールドスポットの加熱による溶解促進であり、主に固体鉄スクラップを溶解する溶解期に使用されてきた。
近年は、超音速で吹き込まれる酸素ガスの周囲に火炎が形成され、酸素ガスの速度や濃度が減衰しにくいバーナランスが提案されている。このバーナランスの採用により、従来精錬期において消耗型ランス等で直接溶鋼へ酸素を吹き込んでいた作業を省略することができ、効率的な電気炉操業が可能になる。
大陽日酸も、コンパクトで極めて簡易なノズル構造の高速酸素バーナランスSCOPE-Jet®」を 2001 年より電炉製鋼プロセス向けに展開。今回、これまで培った電炉製鋼プロセスにおけるノウハウと、昨今の電力代及び副資材の高騰に伴う、市場のコストダウン要求を受けて、「SCOPE-Jet®」の性能・耐久性を向上させ、かつ低圧・低カロリーの燃料にも対応した、新型「SCOPE-Jet®」を開発した。
流体はノズルから噴出されると、周囲流体との相互作用によって噴流が形成される。この噴流にはノズルのすぐ下流にポテンシャルコアと呼ばれる領域があり、この部分の流体は、ノズル出口と同じ速度になる。このポテンシャルコアの後流では噴流は周囲の雰囲気を巻き込みながら発達するとともに、速度が減衰する。これまでの研究により、噴流と周囲雰囲気ガスの密度比が、ポテンシャルコア長さに影響を与え、ポテンシャルコア長さは、ガスの密度比の 1/2 乗で伸びる事が確認されている。
「SCOPE-Jet®」では、ノズル近傍の酸素噴流周囲に火炎を形成することで、噴流周囲の雰囲気温度を上昇させ、噴流のポテンシャルコアを伸ばしている。新型「SCOPE-Jet®」は、火炎を形成するノズルに改良を加え、ポテンシャルコア長さを従来比で 15%伸ばした。これにより、溶鋼への貫通力が向上し、電気炉製鋼の精錬期におけるランス機能が向上している。
また、低圧・低カロリーの燃料においても、火炎の燃焼性を安定させることが可能なため、コークス炉ガス(COG)のような発熱量が低い燃料にも対応可能になった。さらに、従来の「SCOPE-Jet®」で培った電気炉製鋼でのノウハウを生かし、電気炉で発生するスプラッシュ等による閉塞が起こりにくいノズル構造に改良し、耐久性能向上を図った。
今後は向上したランス性能を用いて、溶解期(バーナモード)及び精錬期(ランスモード)での運用並びにカーボンインジェクション、二次燃焼技術とのパッケージングを図ることで、電炉製鋼プロセスにおける、更なるコストダウン提案を行う。さらに、低圧・低カロリー燃料への対応が可能になったため、電炉製鋼での利用だけではなく、COG の利用が可能な高炉メーカへの展開も進める。