PET基材のフィルムへ固定化が可能なカーボンナノチューブ分散液開発

 大陽日酸は、PET 基材などのフィルムへのカーボンナノチューブの固定化が可能なバインダー添加長尺カーボンナノチューブ分散液の開発に成功した。
 カーボンナノチューブは、透明導電膜や帯電防止樹脂などの導電材料として期待されているが、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムなどの基材表面へカーボンナノチューブを固定化するには、カーボンナノチューブを溶媒中に分散させた分散液(以下、カーボンナノチューブ分散液)を基材に塗布し、溶媒を乾燥後、基材表面に形成されたカーボンナノチューブ層の上からバインダー(結着剤)を塗布していた。
 これは、プロセスが2工程となり煩雑なため、1工程で基材表面にカーボンナノチューブを固定化するために、バインダーが添加されたカーボンナノチューブ分散液が望まれている。しかし、カーボンナノチューブ分散液に適切でないバインダーを添加すると溶媒中に分散されたカーボンナノチューブが凝集し、本来の導電性能を損なうため、バインダー、溶媒、分散剤を適切に組み合わせることが必要とされている。
 今回、大陽日酸の保有する高アスペクト比、高純度、高結晶、高電気伝導性を備えた高配向 多層カーボンナノチューブ及びカーボンナノチューブ分散技術を活用し、有機溶媒に比べ環境負荷の小さい水溶媒中に、適切な分散剤とバインダーを選択し配合した、バインダー添加長尺カーボンナノチューブ分散液の開発に成功。
 本分散液は、これまで PET フィルムに直接塗布しにくかった水溶媒に、長尺カーボンナノチューブと最適なバインダーを加えたもので、バインダーを添加していないカーボンナノチューブ分散液を使用した場合と同等レベルの導電性能を維持しながら PET フィルムなどの基材表面へ長尺カーボンナノチューブを固定化することが可能で、高い透明度を実現できる。このためPET フィルムの他、電子部品の搬送用トレー等の帯電防止用途での利用が期待できる。
 大陽日酸は、上記の水系以外にも 1-プロパノール、NMP を溶媒に使用した分散液の開発も完了しており、今後、ユーザーへサンプル提供および PR を進める。