再エネを利用した世界最大級の水素エネルギーシステムの建設工事を開始

 国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、東芝エネルギーシステムズ、東北電力と岩谷産業は、福島県浪江町において、再生可能エネルギーを利用した世界最大級となる1万kWの水素製造装置を備えた水素エネルギーシステム「福島水素エネルギー研究フィールド(Fukushima Hydrogen Energy Research Field (FH2R))」の建設工事を開始した。
 2019年10月までに本システムの建設を完了させ、試運転を開始、2020年7月までに技術課題の確認・検証を行う実証運用と水素の輸送を開始する。なお、本システムで製造された水素は、燃料電池による発電用途、燃料電池車・燃料電池バスなどのモビリティ用途、工場における燃料などに使用される。

【実証事業の概要】
 水素は、電力を大量かつ長期に貯蔵することができ、長距離輸送が可能。また、燃料電池によるコジェネレーションや、燃料電池自動車・燃料電池バスといった移動体など、さまざまな用途で利用可能となる。将来的には、再生可能エネルギー由来の水素を活用し、製造から利用に至るまで一貫してCO2フリーな水素供給システムの確立が望まれている。
 また、政府が2017年12月に公表した「水素基本戦略」では、再生可能エネルギーの導入拡大や出力制御量の増加に伴い、大規模かつ長期間の貯蔵を可能とする水素を用いたエネルギー貯蔵・利用(Power-to-Gas)が必要とされている。この水素を用いたエネルギー貯蔵・利用(Power-to-Gas)には、出力変動の大きい再生可能エネルギーを最大限活用するための電力系統需給バランス調整機能だけでなく、水素需給予測に基づいたシステムの最適運用機能の確立が必要となる。
 このような背景のもと、NEDOの委託事業において、東芝エネルギーシステムズ、東北電力と岩谷産業は、再生可能エネルギーの導入拡大を見据え、電力系統の需給バランスを調整する機能(ディマンドリスポンス)としての水素事業モデルおよび水素販売事業モデルの確立を目指した技術開発に取り組んでいる。
 今回、福島県浪江町(同町大字棚塩地区 棚塩産業団地建設用地内)において、再生可能エネルギーである太陽光発電を利用した世界最大級となる1万kWの水素製造装置を備えた水素エネルギーシステム「福島水素エネルギー研究フィールド」の建設工事を開始。NEDOおよび3社は、本取り組みを通じて、CO2フリーの水素社会の実現を目指す。

【「福島水素エネルギー研究フィールド」の概要】
 「福島水素エネルギー研究フィールド」では、隣接する太陽光発電と系統からの電力を用いて1万kWの水素製造装置により年間最大900トン規模の水素を製造し、貯蔵・供給する。水素の製造・貯蔵は、水素需要予測システムからの市場における水素需要予測に基づいて行われる。
 また、水素製造装置の水素製造量を調節することにより、電力系統の需給バランス調整を行う。この水素の製造・貯蔵と電力系統の需給バランス調整の最適な組み合わせを水素エネルギー運用システムにより実現することが今回の実証運用の最大の課題となる。
 このため、実証運用では、運転周期の異なる装置、インプットのタイミング・期間・量が異なる需要(ディマンドリスポンス、水素)に対し、電力系統のディマンドリスポンス対応と水素需給対応を組み合わせた最適な運転制御技術を検証する。なお、製造した水素は、圧縮水素トレーラーを使って輸送し、需要先へ供給する。