トヨタ、米ロサンゼルス港プロジェクトに投入するFC大型商用トラックを公開

　米国カリフォルニア州ロサンゼルス港で開催された、貨物輸送の「ゼロ・エミッション化」を目指すプロジェクトのイベントで、トヨタ自動車（以下、トヨタ）の北米事業体、Toyota Motor North Americaは、 米トラックメーカーのケンワース（Kenworth）と共同で開発した燃料電池（ＦＣ）大型商用トラックを公開した。今年秋から、このＦＣ大型商用トラックを使用した貨物輸送オペレーションを開始する。

　トヨタは米国カリフォルニアで、商用トラックへのＦＣ技術展開の可能性を検証するためにＦＣ大型商用トラックを試作、２０１７年からロサンゼルス港湾地域での実証を行い、２０１８年にはトラックの一部改良を行うなど、改善を続けている。今回のプロジェクトは、これまでの実証を発展させ、実用化に向けた歩みを進めるものとして、様々なパートナーとともに取り組みが行われた。

　プロジェクトはロサンゼルス市港湾局が中心となり、貨物輸送トラックによる大気汚染問題が深刻なロサンゼルス港やロングビーチ港で、ＦＣ技術などを用いた貨物輸送の「ゼロ・エミッション化」を目指すもので、「ZANZEFF ： Zero-and Near Zero-Emission Freight Facilities Project」と呼ばれる。カリフォルニア州大気資源局から、全体費用（約８３００万ドル）の約半分の４１００万ドルの補助を受け、最終的に５００トン以上の温室効果ガスと、窒素酸化物やＰＭ１０などの有害物質を０・７２トン削減することを目指す。トヨタは、ケンワースやエネルギー企業のシェルなどとともにプロジェクトに参画した。

　使用されるＦＣ大型商用トラックは、トヨタが２０１７年から行ってきた１万４０００マイル以上の走行実証で得られた知見をもとに、ケンワースのトラック「Ｔ６８０」をベースに用い、パワートレーンにトヨタ「ミライ」のＦＣシステムを応用して搭載する。航続可能距離は、平均的な１日の運送距離の２倍となる３００マイル（約４８０キロメートル）。

　ロサンゼルス港を拠点に、近隣のインランド・エンパイア地域やウィーニーミー港周辺のほか、北部のメルセド郡などのエリアで貨物輸送を行う。今年秋から1台目のオペレーションを開始し、順次、１０台まで拡充する。運行においては、トヨタの物流事業を担うToyota Logistics Servicesに加えて、一般の貨物運送会社（United Parcel Services、Total Transportation Services、Southern Counties Express）も参画する。

　トラックへの水素充填では、シェルがロサンゼルス市のウィルミントン地区と内陸部のオンタリオ市に、ＦＣ大型商用トラック向けに大型水素ステーション２基を新たに建設する。プロジェクトでは、バイオマスから水素を作るTri-Gen（トライジェン）のステーションも含めた、トヨタの施設内の３つのステーションとともに、合計５基の水素充填ネットワークを使用する。また、港湾敷地内や倉庫におけるゼロ・エミッション技術の応用拡大として、ウィーニーミー港にゼロ・エミッションのトラクター２台を新たに導入するほか、トヨタの港湾倉庫で使用するフォークリフトのゼロ・エミッション化も拡充する。