大陽日酸、分離型無冷媒希釈冷凍機「e Dilution Ⓡ plus」開発
低温・低振動・低電気ノイズ環境を求める超電導デバイスの開発や、機器ユーザーに最適
大陽日酸は0.1 ケルビン(マイナス 273 ℃)の超低温を、低振動・低電気ノイズで提供できる分離型無冷媒希釈冷凍機「e Dilution Ⓡ plus」を開発した。
希釈冷凍機は絶対零度(マイナス2 7 3 .1 ℃)近傍まで冷却できる装置で、大学や研究機関において、主に基礎物性研究に使用されている。従来の希釈冷凍機は冷媒として液体ヘリウムを大量に消費していたが、近年では液体ヘリウムを使わない無冷媒希釈冷凍機が主流となる。無冷媒希釈冷凍機は電源があればだれでも簡単に扱うことができるため、産業での利用が進んでおり、量子コンピューターや超電導デバイスでの需要が拡大している。大陽日酸は 2003 年に無冷媒希釈冷凍機「e Dilution Ⓡ」を販売し、主に超電導デバイス開発に使用されている。
しかし、機械式冷凍機から発する振動や電気ノイズが、超電導デバイスの性能低下の原因になるため、用途拡大の妨げになっていた。この問題を解決するためにノイズ源である機械式冷凍機を希釈冷凍機本体と分離した、分離型無冷媒希釈冷凍機「e Dilution Ⓡ plus」を開発した。
分離型無冷媒希釈冷凍機「e Dilution Ⓡ plus」は、希釈冷凍機本体と機械式冷凍機を分離させて配置し、その間をフレキシブルホースと絶縁材料で接続することで冷却部への振動伝播と電気ノイズを低減する。また、分離型の構造にしたことにより、希釈冷凍機本体の小型化を実現した。これによって、電子顕微鏡など振動や電気ノイズに敏感な装置への適用や、希釈冷凍機本体だけをシールドルームに収めての使用にも適している。
低温・低振動・低電気ノイズ環境を求める超電導デバイスの開発者や、超電導デバイスを利用した機器ユーザーに最適で、用途に合わせたカスタマイズにも対応する。
分離型無冷媒希釈冷凍機「e-DilutionⓇ plus」の仕様
- 到達温度:80 mK以下
- 冷凍能力:10μW@100 mK
- 温度安定度:±20μK@100 mK