エア・ウォーターが水素ステーションの開発・運営を手掛ける FirstElement Fuel, Inc. に5000万ドル出資
米国で水素サプライチェーン事業化を推進
エア・ウォーターは、米国における統括管理子会社であるAir Water America Inc.(本社:米国ニュージャージー州)を通じて、米国カリフォルニア州で水素ステーションの開発・運営を手掛ける最大手のFirstElement Fuel, Inc.(本社:米国カリフォルニア州、以下「FEF 社」)へ出資した。
エア・ウォーターは、北米市場において、産業ガスの貯蔵・輸送に関する低温機器の製造・販売やエンジニアリング事業のほか、現在、現地ガスディーラーと連携し産業ガス供給への展開を視野に入れた取り組みを進めている。
FEF 社は、2013 年に設立されたスタートアップ企業で、水素を燃料とする燃料電池自動車の世界主要市場の一つである米国カリフォルニア州で31 ヵ所の水素ステーションを運営、2024 年までに同州で80 ヵ所の水素ステーション網を構築することを目指している。
エア・ウォーターは、FEF 社への出資を通じて、同社が推進する水素ステーション網の拡充を支援すると共に、ステーションに設置する液化水素タンク、液化水素トレーラーをはじめとする FEF 社の水素ステーション運営に必要なソリューションを提供する。
また、今後の北米における産業ガスの事業展開の一環として、液化水素の製造・販売・物流など、水素サプライチェーンに関わる新たな取り組みも進める。さらに、日本において水素サプライチェーンの構築が本格化する際には、米国で獲得した水素技術・製品を国内向けに活用することで、早期の事業化を図る。
今回のFEF 社への出資は、エア・ウォーター以外にも株式会社三菱UFJ 銀行、日機装株式会社、ジャパン・インフラストラクチャー・イニシアティブ株式会社が優先株式を取得した。FEF 社は優先株式の発行により1 億500 万ドル(約115 億円)の調達を実施しており、エア・ウォーターの引受額が最も高額となる。
優先株式の取得について
取得日 :2021 年11 月2 日
出資額 :50 百万ドル ※約55 億円
- 出資者 :Air Water America Inc. (エア・ウォーターの100%子会社)
- FEF 社の概要
- 正式名称 :FirstElement Fuel, Inc.(ファーストエレメントフューエル)
- 所在地 :米国 カリフォルニア州 アーバイン市
- 設立年 :2013 年
- 代表者 :Founder & CEO:Joel Ewanick <ジョエル・エワニック>、Founder & CTO:Tim Brown <ティム・ブラウン>、Founder & CDO:Shane Stephens <シェーン・ステファン>
- 事業内容 :FCV(燃料電池自動車)向け水素ステーションの開発・運営
参考①:北米におけるエンジニアリング事業について
エア・ウォーターグループが北米で展開するエンジニアリング分野においては、産業ガスや LNG を運ぶための液化ガストレーラーや貯蔵用の液化ガスタンクなどの低温機器の製作を行っており、低温輸送機器の分野では米国トップクラスのシェアを有する。中でも液化水素タンクやトレーラーの受注は、同国におけるカーボンニュートラルに向けた投資拡大に連動して増加している。
※2021年04月27日付ニュースリリース『米国プラグパワー社と水素サプライチェーン構築のための連携を強化』参照。なお、液化水素はマイナス253℃という極低温のため、可能な限り気化を抑えるための高度なエンジニアリング技術を必要とする。
参考②:カリフォルニア州における水素市場について
米国政府は、2050 年でのカーボンニュートラルを宣言し、脱炭素化を積極的に推進する政策を展開している。中でもカリフォルニア州は、米国で燃料電池自動車の普及が最も進んでいる州であり、現在、約1 万台のFCV が走行する。州政府は、2030 年までにFCV の走行台数を100 万台、水素ステーションを1,000 ヵ所にすることを目標に掲げており、2035 年までに乗用車の新車販売を全てゼロ・エミッション車(ZEV)化するなど、先進的な脱炭素化の取り組みを推進している。こうした動きに連動して、各自動車メーカーも FCV の増産を計画しており、カリフォルニア州における水素ステーションの需要は今後も順調に成長すると見込まれる。
FEF 社は、2021 年現在、カリフォルニア州で 52 ヵ所ある水素ステーションの内、31 ヵ所を運営しており、トップシェアを有する。