大陽日酸が半導体産業向けに無水ヒドラジン供給ソースの販売開始

RASIRC製「BRUTE-Hydrazine」、従来製品より低水分化を実現

 大陽日酸は、半導体産業向けに供給する無水ヒドラジン材料のRASIRC※1製「BRUTE-Hydrazine」で、従来製品よりさらに低水分化を実現した同製品の販売を開始した。

 半導体製造プロセスにおける水分などの不純物の混入は、半導体の結晶品質や電気特性の悪化につながり、半導体デバイス特性や製品歩留まりの低下に直結する。それに対し、RASIRC社では精製技術を向上させ、「BRUTE-Hydrazine」の気相中の水分含有量を従来品※2比1/10~1/100 に低減することに成功した。

「BRUTE-Hydrazine」の製品概要

 「BRUTE-Hydrazine」は液体無水ヒドラジンと安定剤となるRASIRC社独自の有機溶媒を混合することによって安全性を向上させた液体材料ソースとなる。ヒドラジンは容器ヘッドスペー スに気化し、キャリアガスまたは真空搬送によってユースポイントまで供給される。

 ヒドラジンは一般的な窒化源であるアンモニアと比較し、反応性が高いため、成膜プロセスの低温化だけでなく、成膜レートや電気特性の向上が確認されている。また、適応プロセスとしては成膜時の窒化源としてだけでなく、優れた還元性を活かし、表面クリーニングや膜改質等への応用も期待できる。

BRUTEⓇ-Hydrazine 容器外観
BRUTEⓇ-Hydrazine 容器外観(左:1000g 充填用容器、右:250g 充填用容器)

仕様変更後の「BRUTE-Hydrazine」の製品仕様

型式充填量(g)H2O 気相濃度(ppb)
Version 7.0250, 1000<100
Version 8.0250<10

 大陽日酸では今後、半導体製造プロセス向けに「BRUTE-Hydrazine」の拡販を進める。「BRUTE-Hydrazine」を用いたSiNのALD成膜に関して、シアトルで 2023 年 7 月 23 日~7 月 26 日(現地時間)に開催される「23rd International Conference on Atomic Layer Deposition (ALD/ALD 2023)」で発表を行う。

※1. RASIRC, Inc.(本社:米国カリフォルニア州 CEO:Jeffry Spiegelman)は大陽日酸グルー プ会社であり、同社の保有する高度な膜分離技術によって、微細化が進む半導体製造プロセス向けに新材料および蒸気発生装置を提供している。

※2. 製品仕様の変更に伴い、従来品の販売は中止となる。

参考:大陽日酸成膜データ

大陽日酸技報 No.39 (2020), 無水ヒドラジンを用いた TiN ALD(原子層堆積法)プロセス (PDF)