レゾナックと川崎重工「川崎地区での水素発電事業開発にかかる協業の覚書」を締結

2030年頃にレゾナック川崎事業所で100MW以上の水素発電事業を開始

 レゾナックと川崎重工業は2023年10月17日、2030年頃の水素利活用を見据えた「川崎地区の水素発電事業開発にかかる協業の覚書」(以下、本覚書)を締結した。

レゾナックと川崎重工が「川崎地区での水素発電事業開発にかかる協業の覚書」

(左)川崎重工業 常務執行役員 原田 英一 水素戦略本部長 、(右)レゾナック 理事 原 聡 基礎化学品事業部長

 本覚書では、国際液化水素サプライチェーンの確立が見込まれる2030年頃に、レゾナック川崎事業所で100MW以上の水素発電事業(CO2削減量70万トン相当*)を開始し、クリーンなエネルギーを電力市場に供給するとともに両社で活用することで脱炭素化を目指す。

※)環境省「電気事業分野における地球温暖化対策の進捗状況の評価結果について」(参考資料集)(P36)をもとに計算 https://www.env.go.jp/content/900515878.pdf 

 水素は燃焼時にCO2を排出しないため、脱炭素社会に貢献する次世代エネルギーとして世界中で注目されている。今後、2030年ごろに国際液化水素サプライチェーンが確立することが見込まれているが、供給側の着実な歩みとともに、供給された大量の水素の具体的な活用先についても検討を進めていく必要がある。

 両社は、NEDOのグリーンイノベーション基金事業「液化水素サプライチェーンの商用化実証」(以下、商用化実証)で、液化水素受入基地の建設予定地となっている川崎臨海部にあるレゾナック川崎事業所(神奈川県川崎市)における水素発電の協業検討を開始している。

 レゾナックグループは、半導体・電子材料、モビリティ、イノベーション材料、ケミカル等を展開し、川中から川下まで幅広い素材・先端材料テクノロジーを持ち、「共創型化学会社」として、共創を通じて持続的な成長と企業価値の向上を目指す。2021年に長期ビジョンで2030年のGHG排出量削減目標を「2013年比30%削減」とした。徹底した合理化、効率化、省エネルギー、ガス燃料への転換を進め、2050年に向けては水素などクリーンな燃料への転換を推進することでカーボンニュートラルの達成を進める。

 川崎重工は、2010年からカーボンニュートラルの切り札である水素に着目し、液化水素サプライチェーン全体(つくる・はこぶ・ためる・つかう)にわたる技術開発を進めてきた。2018年には世界で初めて市街地での水素100%による熱電供給を達成。2022年2月には、同社が建造した世界初の液化水素運搬船「すいそ ふろんてぃあ」による日豪間の海上輸送・荷役実証を完遂し、液化水素サプライチェーンの構築が可能であることを証明した。現在は、2021年に設立した子会社の日本水素エネルギー株式会社(JSE)を中心に、2030年までに液化水素の海上輸送技術の確立を目指す商用化実証に取り組む。

 レゾナック川崎事業所のある川崎地区は、臨海部にあることから海上輸送を通じた大規模な水素調達に適している。両社は、地の利を活かし、大量の水素の需要元となる水素発電事業の開発に関して、事業スキーム・発電システムの仕様・水素等の供給方法などについてレゾナック川崎事業所における調査・検討を行う。 

レゾナック川崎事業所航空写真(中央部)
レゾナック川崎事業所航空写真(中央部)

 今後両社は、本覚書による水素発電の社会実装に向けた取り組みを通じて、2030年頃の川崎地区における水素発電によるクリーンな電源供給と、我が国のカーボンニュートラルの実現に貢献する。

本覚書による検討事項

  1. 川崎地区の水素発電事業にかかる事業スキームの検討
  2. 水素発電にかかる設備仕様・法規制対応・各種契約の検討
  3. 水素普及に向けた政府の支援制度の利用に関する検討
  4. 燃料調達スキームの検討、等 

両社のコメント

レゾナック 理事 原 聡  基礎化学品事業部長

「レゾナックは、川崎事業所で独立系発電事業者(IPP)国内第一号として長年発電事業に取り組んできました。このたびの水素発電事業は当社にとって大きな転換点です。早くから水素に着目し、技術的知見のある川崎重工様との共創を通じて、カーボンニュートラルを実現するクリーンな電源供給に向けて世の中の期待に応えるとともに、水素の普及に貢献していきます」

川崎重工 常務執行役員 原田 英一  水素戦略本部長

「日本のCO2排出量の約4割を占める発電セクターで水素利用を推進することは、カーボンニュートラルの実現において重要な役割を果たします。今回はレゾナック様と一緒に水素の社会実装に向けた検討を進めることになったことを大変喜ばしく思います。本覚書の締結を通じて、水素を利用したクリーンなエネルギーの提供とカーボンニュートラル社会の早期実現に貢献していきます」