岩谷産業 2024年3月期第3四半期連結決算

セパレートガスと水素は販売数量減、炭酸ガスは堅調

 岩谷産業の2024年3月期第3四半期連結決算は、売上高6175億1300万円(前年同期比5.8%減)、営業利益319億0600万円(同35.7%増)、経常利益367億7000万円(同25.2%増)、親会社株主に帰属する四半期純利益241億6900万円(同23.7増)だった。直近公表の通期連結業績予想と年間配当金の予想に変更は無い。

 水素エネルギー社会の実現に向けて、水素関連プロジェクトのエンジニアリング事業協業のために、コスモエネルギーホールディングスのグループ会社と合同会社を設立した。また、国内初となるバスの事業所内を含む、東京都の所有地2か所での水素ステーション整備事業者に岩谷コスモ水素ステーション合同会社が選定され、FC商用車向けの需要に対応した水素ステーション建設の取り組みを進めた。さらに、中央研究所・岩谷水素技術研究所において純水素型燃料電池を導入し、液化水素の冷熱を利用したエネルギーマネジメントシステムの実証研究を進め、工場や事務所におけるエネルギー供給モデルを提案した。

 総合エネルギー事業では、鹿児島市による桜島火山爆発総合防災訓練でIoTプラットフォームの「イワタニゲートウェイ」と株式会社ottaの見守りシステムを連携させた防災支援システムを活用する実証を行なった。イワタニ独自のLPガスネットワークとIoTを活用し、今後も社会課題の解決を図るサービスの提供に取り組む。

 産業ガス・機械事業では、エアコンや自動車の普及拡大による冷媒需要の拡大が予想される中、マレーシアの冷媒事業会社を買収し、温暖化への影響がより小さい冷媒への切り替えや、同国初となる使用済みフロンの回収・再生事業を行い、東南アジアでの事業拡大を図った。

 マテリアル事業では、豪州において、資源の安定調達の強化と持続的成長に向けてミネラルサンド鉱区の拡張を図るとともに、所有地での植樹を実施し、政府機関へのカーボンクレジットプログラムの登録が完了するなど植林事業を推進した。

 セグメント別の経営成績は次のとおり。

総合エネルギー事業

 LPガス輸入価格が下落傾向で推移した後に上昇したが、前年同期を下回り、販売価格は低下した。また、大口顧客向けを中心にLPガスの販売が減少し、減収。一方、利益面においては、LPガス小売部門での収益性改善に加え、カセットガスやガス保安機器の販売が伸長し、増益となった。また、LPガスの市況要因による減益影響も改善(前年同期比5億1900万円の増益)した。売上高は2420億5500万円(同331億0200万円の減収)、営業利益は73億1600万円(同16億5800万円の増益)。

産業ガス・機械事業

 エアセパレートガス及び水素ガスについては、半導体、電子部品業界向けを中心に販売数量が減少したが、製造コスト増加への対応に努めたことにより収益性は改善した。特殊ガスについては、飲料業界向けに炭酸ガスが堅調に推移するとともに、ヘリウムの安定供給に努めた。機械設備は、パワー半導体向け設備やガス供給設備の販売が伸長した。売上高は1937億8100万円(前年同期比229億9700万円の増収)、営業利益は169億5700万円(同59億7900万円の増益)。

マテリアル事業

 次世代自動車向け二次電池材料で、販売先での在庫調整の影響等により販売数量が減少し、減収。一方で、バイオマス燃料や飲料ボトル向けPET樹脂、スマートフォン向け機能性フィルムが好調に推移するとともに、海外でのミネラルサンド事業が伸長した。また、ステンレスや、エアコン・自動車部品向けを中心とする金属加工品も堅調に推移した。売上高は1589億7300万円(前年同期比283億6800万円の減収)、営業利益は92億1300万円(同4300万円の増益)。

その他

 売上高は227億0400万円(前年同期比2億円の増収)、営業利益は23億1000万円(同8億9000万円の増益)。