日本酸素HD 2024年3月期通期連結決算(IFRS)
中計財務KPIのうち、売上収益、コア営業利益、ROCE after Taxで目標値を上回る
日本酸素ホールディングスの2024年3月期通期連結決算は、売上収益1兆2550億8100万円(前年同期比5.8%増)、コア営業利益1659億9600万円(同34.8%増)、営業利益1720億4100万円(同43.9%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益1059億0100万円(同44.9%増)だった。2024年3月期期末配当金を直近予想の20円から4円増配し、24円とした。
グループ全体として主に鉄鋼、化学、石油精製向けにオンサイトで供給するセパレートガス(酸素、窒素、アルゴン)の出荷数量は、前期比で減少した。一方、一部の地域ではセパレートガスの製造原価に多く占める電力コストの負担は前期に比べ緩和。また、コスト増加分の販売価格への転嫁等のグループ全体での価格マネジメント、さまざまな生産性向上に取り組んだ。
為替の影響については、期中平均レートが前連結会計年度に比べ、米ドルで136円0銭から145円31銭へと9円31銭(同6.8%円安)、ユーロで141円62銭から157円72銭へと16円10銭(同11.4%円安)となるなど、売上収益は全体で約598億円、コア営業利益は全体で約75億円のプラス影響となっている。
セグメント業績
セグメント業績は、次のとおり。セグメント利益はコア営業利益で表示。コア営業利益は営業利益から非経常的な要因により発生した損益(事業撤退や縮小から生じる損失等)を除いて算出。
日本
主力製品であるセパレートガス、及びLPガスの出荷数量は減少したが、コスト上昇を背景とした価格マネジメントの効果により、増収となった。また、エレクトロニクス関連での電子材料ガスの出荷数量は軟調。機器・工事では、産業ガス関連、エレクトロニクス関連共に、中大型案件の工事の進捗に伴う売上等により、増収となった。一方、特定顧客向けにオンサイト供給を担う子会社のジョイント・オペレーション化及び民生用LPガス事業を担う子会社の非連結化による減収影響があった。
売上収益は、4143億6500万円(前連結会計年度比 1.4%減少)、セグメント利益は、429億9800万円(同 35.7%増加)。
米国
産業ガス関連の売上収益は、主力製品であるセパレートガスの出荷数量は減少したが、価格マネジメントの効果及び円安の影響により、増収。機器・工事では、産業ガス関連は前期並みだが、エレクトロニクス関連は順調に推移し、増収となった。
売上収益は、3470億5400万円(前連結会計年度比 14.5%増加)、セグメント利益は、500億0400万円(同 34.9%増加)。
欧州
主力製品であるセパレートガスにおいては、出荷数量が減少したものの、価格マネジメントの効果及び円安の影響もあり、増収。機器・工事では、ガス関連機器及び医療関連機器の販売が好調で増収となった。
売上収益は、3024億7700万円(前連結会計年度比 10.8%増加)、セグメント利益は、532億5900万円(同 52.6%増加)。
アジア・オセアニア
産業ガス関連では、主力製品であるセパレートガスの出荷数量は減少したが、円安の影響及びコスト上昇等を背景とした価格マネジメントの効果により、売上収益は増加した。なお、主に豪州地域での販売が多くを占めるLPガスでは、販売数量は微減。エレクトロニクス関連では、東アジアで、客先による在庫調整や設備投資の先送りに伴い、ガス・機器ともに軟調で大きく減収となった。
売上収益は、1603億2700万円(前連結会計年度比 0.2%増加)、セグメント利益は、159億4800万円(同 3.1%増加)。
サーモス
日本では、ケータイマグ及びスポーツボトルの販売が好調で、売上収益は増加。また、海外での販売は前期並みだった。セグメント利益は、物価上昇による原材料価格の上昇と円安による製造コストの増加で、減益となった。
売上収益は、307億6500万円(前連結会計年度比 1.9%増加)、セグメント利益は、55億6600万円(同 7.6%減少)。
今後の見通し
2025年3月期の産業ガス事業では、食品・飲料、医療といったレジリエントマーケットへの注力による成長のほか、カーボンニュートラル社会の実現に向けて取り組む顧客とともに新たな事業機会を探求する。また、エレクトロニクス分野では、顧客の生産、需要、設備投資計画に合わせた対応を行う。
地政学的問題を背景とした2022年3月期から始まった世界的なエネルギー価格の上昇による厳しい事業環境は、徐々に緩和しているが、地域により状況が異なるとともに、依然として今後のエネルギー価格を見通すことは容易ではないとし、引き続き、適切な価格マネジメント、さまざまな生産性向上への取組みに、グループ全体で注力する。
サーモス事業は、物価上昇による原材料価格の上昇と円安による製造コストの増加は継続する見通し。新たなデザイン、あるいは食洗器対応シリーズ等の機能性を高めた新製品の販売や、調理器具を含む製品ラインナップの拡充、オンライン通販ビジネスを含む電子商取引(EC)サービスに注力し、業績改善を図る。
2024年3月期の連結会計年度では中期経営計画「NS Vision 2026 – Enabling the Future」で定めた5つの財務KPI目標(最終年度:2026年3月期)のうち、3つの指標(売上収益、コア営業利益、ROCE after Tax)で上回った。今後も顧客の期待に応え、顧客への価値提供、価格マネジメント、生産性向上の取組みを継続し、収益力の強化を図る。
2025年3月期の連結業績予想は、売上収益1兆3000億円(前年同期比3.6%増)、コア営業利益1770億円(同6.6%増)、営業利益1770億円(同2.9%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益1050億円(同0.9%減)を見込む。主要通貨の米ドル・ユーロの想定為替レートは、 米ドルで145円31銭、ユーロで157円72銭と2024年3月期通期と同水準とした。年間配当金予想は、中間配当が前年同期比4円増配の24円、期末配当は24円を維持し、年間配当は48円(前年同期比4円増配)を予想する。