産業ガスの価格マネジメントや事業構造改革、海外産業ガス、アグリの各分野で順調に推移し、全セグメントで増益
エア・ウォーターの2025年3月期第1四半期連結決算(IFRS)は、売上収益2459億4300万円(前年同期比6.9%増)、営業利益139億3900万円(同23.8%増)、親会社の所有者に帰属する純利益93億6300万円(同31.1%増)となった。売上収益は第1四半期として過去最高を更新した。
エア・ウォーターグループでは、ユニット制を基軸としたグループ一体経営によって、国内既存事業の収益力を強化し、今後の成長領域である海外事業の基盤構築と、社会課題解決に向けたカーボンニュートラルやアグリ関連の取り組みを進めた。
当期間の業績は、これまで実施してきた各種産業ガスの価格マネジメントや事業構造改革が進展したことに加え、成長領域と位置付ける海外での産業ガス、アグリの各分野での取り組みなどが順調に推移し、全てのセグメントで増益となった。通期業績予想と年間配当金予想に変更はない。
連結セグメント別業績
デジタル&インダストリー
セグメント売上収益は785億2400万円(前年同期比3.9%減)、営業利益は60億4400万円(同14.0%増)。
国内で半導体・デジタル産業における生産拠点の増強が進む中、新規取引先の開拓や大型プラントの設備投資を実行しガス需要の獲得を図るとともに、特殊ケミカルの供給やガス精製装置の販売といったエレクトロニクス関連事業の拡大に取り組んだ。また、産業ガスの需要が全般的に弱含みで推移する中、前年度から継続して各種ガスの価格改定や製造・供給体制のさらなる効率化を推進した。
売上収益は、鉄鋼向けオンサイトガス供給の販売単価が下落したことに加え、機能材料事業における基礎化学品の販売が低調に推移したことにより、産業ガスの価格改定による増収分を打ち消し、前年同期を下回った。営業利益は、大手半導体工場向けのガス供給が堅調に推移したことに加え、前年度から実施してきた産業ガスの価格マネジメントの効果が発現し、前年同期を上回った。
エネルギーソリューション
セグメント売上収益は147億4100万円(前年同期比6.7%増)、営業利益は8億7900万円(同32.1%増)。
低・脱炭素需要が高まる中、顧客に対して重油からLNGへの燃料転換を積極的に進めたほか、牛ふん尿由来の液化バイオメタンなど、地域の未利用資源を活用したカーボンニュートラルに寄与するエネルギー供給を開始した。また、北海道を中心とした家庭向けLPガス供給は、IoT技術を活用した配送の効率化や販売店の商権を取得し顧客獲得に努めるなど、収益力の強化に取り組んだ。
売上収益は、LPガスが輸入価格に連動し、顧客への販売価格が上昇したことで、前年同期を上回った。また、LNGの販売数量増も寄与した。営業利益は、前年同期に計上したLPガスの在庫評価影響がなくなり、増益となった。
ヘルス&セーフティー
セグメント売上収益は563億8900万円(前年同期比8.2%増)、営業利益は24億6600万円(同2.7%増)。
医療用ガスの供給基盤を通じて医療現場のニーズを汲み取り、医療機器の開発、手術室などの病院設備の高度化提案、病院業務のアウトソーシング受託などに注力した。また、日常のヘルスケアにかかわる在宅医療、デンタル、衛生材料、注射針、エアゾール・化粧品といった、生活者により近い事業の体制強化を進めた。さらに、防災分野では、データセンター向け工事案件の獲得に努めた。
売上収益は、防災分野で、海外と連携したデータセンター向け非常用発電機の工事が進捗したほか、一酸化窒素吸入療法の症例数や介護用シャワー入浴装置の販売が増加したことで、前年同期を上回った。また、注射針およびエアゾールや化粧品などの受託製造は前年同期並みで推移。営業利益は、医療機器や衛生材料など輸入品を中心に原材料価格上昇の影響を受けたが、医療用ガスを中心とした価格改定の効果が発現し前年同期を上回った。
アグリ&フーズ
セグメント売上収益は425億8900万円(前年同期比11.2%増)、営業利益は17億3100万円(同27.8%増)。
持続可能な農業と食料安定供給システムの実現を見据え、アグリ分野において同業4社での協業体制を構築し、原料調達機能や青果流通・加工におけるプラットフォームの強化を進めた。また、スマート農業技術の向上や物流・加工機能を活かした新たなビジネスモデルを確立するとともに、ライフスタイルの変化や多様な食のニーズに対応した市販用食品の販売に注力した。
フーズ分野において、食肉などの原材料価格が上昇した影響を受けたものの、冷凍ブロッコリーなどの販売が堅調に推移。また、野菜・果実系飲料の受託製造が好調に推移したことに加え、アグリ分野において九州で青果仲卸事業を展開する丸進青果㈱を前連結会計年度に新規連結したことで、売上収益・営業利益ともに前年同期を上回った。
その他の事業
セグメント売上収益は536億9700万円(前年同期比21.9%増)、営業利益は20億6900万円(同153.7%増)。
物流事業は、一般貨物輸送及び食品物流が堅調に推移したことに加え、受託料金適正化の取り組みを進めたことで、順調に推移。
㈱日本海水は、業務用塩の販売量が回復したことに加え、2023年8月に営業運転を開始した苅田バイオマス発電所の稼働が売上収益に貢献し、堅調に推移した。
電力事業は、小名浜バイオマス発電所が安定稼働を継続し、前年同期並み。
グローバル&エンジニアリング事業におけるインドでの産業ガス分野は、鉄鋼向けオンサイトガス供給とタンクローリー・シリンダーによるガス供給ともに堅調に推移した。北米での産業ガス分野は、前連結会計年度に新規連結したガスディストリビューター2社が収益貢献した。また、高出力UPS(無停電電源装置)分野は、データセンター市場の成長に伴い、堅調に推移。
これらの結果、その他の事業は売上収益・営業利益とも前年同期を上回った。