大陽日酸、酸素燃焼技術で熱処理用変成ガス発生プロセスからCO2排出量を80%削減
触媒反応で求められる熱量を可燃性ガスの酸素燃焼から発生する熱でまかなうことで、大幅にエネルギーを削減
大陽日酸は、酸素燃焼技術を利用した熱処理炉向け変成ガス発生プロセスを開発し、従来技術では電気加熱による多量の電力消費が必要だったプロセスからCO2排出量を80%削減することに成功した。同社は、開発したプロセス技術を活用し、部品加工など熱処理を利用する幅広い業界をターゲットに、熱処理炉向けの実用検討を進め、本技術の早期の商品化を目指す。
長年培ってきた酸素燃焼技術により、触媒反応で求められる熱量を可燃性ガスの酸素燃焼で発生する熱によりまかなうことで、大幅にエネルギーを削減した。さらに酸素バーナの燃焼条件と、変成炉構造やガス制御、触媒の最適化により、従来技術と比較しCO2排出量を80%削減した。この技術を応用することで、各種熱処理に求められる変成ガスを発生させる、省エネ式のガス変成技術を提供することが可能になる。
日本国内では年間約11.2億トンのCO2が排出されており、そのうち、熱処理等を行う工業炉から13.5%のCO2が排出されている。工業炉は国内に約3.7万基あるといわれ、政府の掲げる2050年カーボンニュートラルの実現には、これらの設備におけるCO2排出量削減策を講じていく必要がある。
従来技術である吸熱型変成ガス発生装置は、LPガスや都市ガスなどの炭化水素系ガスと空気を混合し、ニッケル触媒を用いた吸熱反応によって変成ガスを生成する。しかし、ニッケル触媒を1,000℃以上の高温に加熱する必要があるため多量の電力が必要だった。
大陽日酸では、以前より窒素ガスベース熱処理を提案、そして、エネルギー多消費技術であるガス変成技術に着目し、2013年に『省エネ型酸素燃焼式のガス変成技術』を開発した。今回は、この技術をベースに要素技術の見直しとブラッシュアップを行い、高濃度のCO+H2を発生させるだけでなく、従来の変成ガスと同等の組成のガスを発生させることができる酸素燃焼技術を活用した新たなプロセスを実現した。
大陽日酸では、日本酸素ホールディングスの中期経営計画「NS Vision 2026~Enabling the Future~」の5つの重点戦略の1つである「カーボンニュートラル社会に向けた新事業の探求」や日本の産業ガス事業の成長戦略としての「ソリューションビジネスの拡大」に基づき、得意とする酸素燃焼や熱処理などの産業ガスアプリケーション技術を、革新的な商品開発や生産合理化、カーボンニュートラルに貢献するため、グローバルに事業を推進するとしている。