帝人 2025年3月期通期連結決算(IFRS)
CPAPは検査数の増加で新規処方件数拡大継続、レンタル台数は前期末対比約7%増。新機台の投入台数や消耗品使用量の増加でコスト負担が増大
帝人の2025年3月期通期連結決算は、売上収益1兆0054億7100万円(前年同期比4.7%増)、事業利益※275億9400万円(同25.7%増)、営業利益718億2800万円の赤字(前年同期は49億1200万円の赤字)、親会社の所有者に帰属する当期純利益283億4700万円(前年同期は117億1200万円の赤字)となった。2023年4月1日を移行日として、当期からIFRSを適用、前期の連結財務諸表についても、IFRSを適用して表示。
※事業利益は、営業利益に持分法による投資損益を加算し、非経常的な損益(持分法による投資損益のうち金融損益や減損損失等の非経常的な損益を含む)を除いて算出
帝人グループは、2024年5月に中期経営計画2024-2025を公表し、「収益性改善の完遂による基礎収益力の回復」と「事業ポートフォリオ変革」を主要課題に掲げ、各種施策を推進している。2024年度は収益性改善の施策を概ね計画通り達成するとともに、戦略的オプションの実行による事業の絞り込みに目途を付けた。一方、景気減速の影響により、マテリアル事業領域の需要が伸び悩むなど、新たな課題に直面した。中期経営計画で掲げた中長期的な方針に変更はないが、成長軌道への回帰に向けて、短期的には足元の厳しい市場環境に適応すべく、生産体制の見直しを含むコスト削減に取り組むなどレジリエントな対応を進める。
事業利益に関して、マテリアル事業領域では、収益性改善策の効果の追加発現や、アラミド事業および樹脂事業を中心とした複数の用途での販売量増加により増益。また繊維・製品事業は、販売が好調に推移し増益となった。ヘルスケア事業においては、薬価改定影響および在宅医療機器の新機台投入によるコスト増などにより減益だった。
在宅医療分野を含むヘルスケアセグメントの売上収益は1370億円(前年同期比77億円の減収、同5.3%減)、事業利益57億円(前年同期比125億円の減益、同68.7%減)。在宅医療機器分野では、在宅持続陽圧呼吸療法(CPAP)市場において、検査数の増加に伴い新規処方件数の拡大が継続し、レンタル台数は順調に増加(前期末対比約7%増)した。一方、新機台の投入台数や消耗品の使用量の増加に伴うコスト負担が増大。また、在宅酸素療法(HOT)市場では、全体としてはレンタル台数が微減となったが、2023年7月に上市した携帯型酸素濃縮装置新機種「ハイサンソポータブルαⅢ」のレンタル台数が順調に増加した。
今後の見通し
2025年度は戦略的オプションの実行により絞り込んだ事業ポートフォリオでの収益基盤を整え、成長に向けての戦略の具体化と実行を進める。2026年3月期通期連結業績予想は、売上収益は8600億円(前年同期比14.5%減)、事業利益は350億円(同26.8%増)、営業利益は200億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は120億円(同57.7%減)。年間配当金予想は中間配当25円、期末配当25円の合計50円を維持した。ヘルスケアセグメントの通期業績見通しは売上収益1350億円(前年同期比20億円の減収)、事業利益125億円(同68億円の増益)。