カーボンファイバーを充填物に採用した溶解アセチレン新容器を開発

岩谷産業と岩谷瓦斯が海外メーカーと共同開発、アスベストフリーで安全性を向上

 岩谷産業、岩谷瓦斯は、イタリアの総合ガスメーカーであるSIAD社が開発した充填物を用いた新容器を共同開発し、高圧ガス保安協会の性能試験に合格した。これに伴い、2008年10月から、自社グループ内の容器の切り替えを優先的に行い、その後、積極的に輸入販売を開始する。

 これまで国内では、充填物の一部にアスベストを使用しており、この代替品として、グラスファイバーを用いることが一般的だったが、今回開発した新容器では、カーボンファイバーを使用し、より安全性を高めている。また、ガスの充填可能量、放出速度、多孔度、多孔性物質の容器壁とのクリアランスは従来の容器と同等の性能を確保した。

【溶解アセチレン容器の現状と課題】

 アセチレンは分子式C2H2で、分子内に3重結合を持つ不飽和炭化水素であり、反応性が大きく極めて不安定な物質。このため、酸素や窒素のように圧縮ガスとして充填すると、わずかなエネルギーで分解爆発を起こす可能性がある。溶解アセチレン容器とは、この不安定なガスを安定的に貯蔵するため、多孔性物質を詰めた容器に、溶剤としてアセトンまたはジメチルホルムアミドを染み込ませた容器で、ここにアセチレンを充填することで、アセチレンは溶剤に溶解し、安定的な貯蔵が可能になる。

 従来のアセチレン容器では、多孔性物質の原料の一部としてアスベストを用いていた。これは、容器内に完全に密閉されており、使用に際して人体に影響を与えるものではないため、現在でも既存のものに限り容器の使用が認められている。しかしながら、溶解アセチレン容器は約120万本が流通されていると推定され、これらの中にはかなりの経年となったものもあり代替の要求が市場からも寄せられていた。これらの要求に対し、国内容器メーカーの生産能力だけでは、かなりの時間が必要となることが予測され、アセチレンを製造・販売しているイワタニグループでは、早期転換を促進するため、自社での容器の製品化が必要と考え、この課題に取り組んできた。

 製品開発にあたり、以前より協力関係の深かった米国プラックスエア社のグループ企業であり、10年以上前よりこの問題に取り組み、EU市場で多くの実績を残しているイタリアSIAD社と提携。また、性能試験にあたっては世界的に権威のある研究・検査機関であるドイツBAM(ドイツ連邦材料試験研究所)の協力を得て高圧ガス保安協会の検査項目に合格した。
 

【新容器のスペック】

■ 素材

 

 

鋼製(溶接容器)

胴板:JIS G3116高圧ガス容器用鋼板および鋼帯SG295

鏡板:JIS G3116高圧ガス容器用鋼板および鋼帯SG255

■ 溶剤

アセトン

■ 容器容量

41L

■ 容器重量

約52Kg(多孔性物質:約11Kg、アセトン:約14Kg) 

■ 充填量

7.2Kg

■ 容器寸法

 

高さ:951mm

外径:259mm 

■ 最高充填圧力

1.5MPaG at 15℃

■ 耐圧試験圧力

4.9MPaG

■ 気密試験圧力

2.9MPaG