京浜臨海部における大規模水素利用の本格検討を開始

昭和電工・川崎市など7者、異業種連携による水素の需要・供給の好循環に向けた水素利用拠点の形成を加速

 旭化成株式会社(代表取締役社長:小堀秀毅、以下「旭化成」)、味の素株式会社(代表執行役社長:西井孝明、以下「味の素」)、ENEOS株式会社(代表取締役社長:大田 勝幸、以下「ENEOS」)、東日本旅客鉄道株式会社(代表取締役社長:深澤祐二、以下「JR東日本」)、昭和電工株式会社(代表取締役社長:髙橋秀仁、以下「昭和電工」)、東芝エネルギーシステムズ株式会社(代表取締役社長:小西崇夫、以下「東芝ESS」)及び川崎市の7者は、京浜臨海部において水素利用拠点を形成し、将来的な水素利用に関する需要・供給双方の拡大という好循環を実現するため、水素利用のネットワークとして業種横断で連携し、エリアの中長期的な水素需要と実現可能な供給網を可視化すべく検討を開始する。

【異業種連携による本格検討の概要】

 京浜臨海部は、川崎臨海部を中心に、LNG発電所や工場、空港といった大規模需要家の集積に加え、港湾や既設の水素パイプライン網といった水素の受入・供給拠点形成に必要な機能が存在し、水素の需要・供給双方のポテンシャルが非常に高い地域。2013年には、川崎臨海部水素ネットワーク協議会が設立され、全国に先駆けて産学官の連携による水素利用拡大に向けた取組が進められてきた。

 こうした地域特性を踏まえるとともに、カーボンニュートラル社会の実現を目指すため、各者がそれぞれ取り組んできた環境配慮等の取組内容や知見を活用し、主に水素需要家としての視点から次の事項に連携して取り組み、異業種連携による水素利用の本格検討を行う。

  1. 水素需要量の推計
  2. 関連する技術開発等の動向把握
  3. 水素供給事業者及び関連機器メーカー等、供給側企業との連携
  4. その他、水素の需要・供給拡大のために必要な事項

※一定の条件下での推計を行うもの

 これらの取組により、水素の利用拠点の形成を加速することで、水素の供給量拡大や関連する技術開発の促進につなげ、水素の需要と供給双方の拡大という好循環の創出を目指す。

 なお、検討を進めるにあたっては、川崎臨海部水素ネットワーク協議会や、既存の調査事業との連携も視野に、今回連携する7者以外の近隣企業の参画も歓迎しつつ、具体的な検討を進める。

【京浜臨海部のポテンシャルと取組のイメージ】

京浜臨海部における大規模水素利用の本格検討
京浜臨海部のポテンシャルと取組のイメージ

【異業種連携による本格検討の概要】

 旭化成グループは2021年にサステナビリティ基本方針を策定、2050年カーボンニュートラルを含む「持続可能な社会への貢献」と「持続的な企業価値向上」の2つのサステナビリティの好循環を追求する。京浜臨海部には川崎製造所が立地しており、同所のカーボンニュートラル化に向け、水素の利活用拡大を含め近隣企業等と連携した対応を検討。

 味の素グループは2020-2025中期経営計画にて地球環境との共生に向け、2030年度に温室効果ガス排出量を50%削減(Scope1、2)(基準年:2018年度)することなど、「気候変動への適応とその緩和」に取り組む。さらに、2050年度にはカーボンニュートラルを目指す。京浜臨海部には川崎事業所が立地しており、同所のカーボンニュートラルに向け、水素エネルギーを選択肢の1つとして、近隣企業等と連携した対応を検討。

 ENEOSグループは、脱炭素・循環型社会の実現に向けて、COフリー水素サプライチェーンの構築に取り組む。ENEOSの製油所では、水素を大量生産して石油精製の脱硫プロセス等に利用しており、長年にわたって蓄積してきた水素の取り扱いや安全管理に関するノウハウを活かすことができる。京浜臨海部においては、同社製油所をCOフリー水素の受入・供給拠点と想定し、既存パイプラインを活用した大規模水素需要家への効率的な水素供給モデルの構築を検証しており、水素エネルギーの利用拡大に向けて近隣企業等との連携を進める。

 JR東日本グループは、2050年までにCO排出量を「実質ゼロ」にする「ゼロカーボン・チャレンジ2050」に取り組む。京浜臨海部の自営火力発電所における脱炭素化を目指すとともに、水素社会の実現と需要拡大に貢献するため、近隣企業等と連携した対応を検討。

 昭和電工グループは、長期ビジョンでの目指す姿 「持続可能なグローバル社会に貢献する会社」として、2050年のカーボンニュートラルの実現に挑戦する。これまでも川崎事業所でのプラスチックケミカルリサイクル事業「KPR」にて、使用済プラスチックを分解して取り出した水素を、ホテルの燃料電池に供給する実証などのさまざまな取組を行ってきた。今後もこうした技術を活用し、資源循環やカーボンニュートラルに貢献するとともに、京浜臨海部に複数存在する自社拠点のカーボンニュートラル化に向け、近隣企業等と連携した対応を検討する。

 東芝ESSは、2014年11月に川崎市と連携協定を結び、川崎マリエンにて「自立型水素エネルギー供給システム」の実証実験等を行ってきた。また、純水素燃料電池システムの製造拠点を2020年より浜川崎工場浮島地区に集約している。こうした取組を踏まえて、京浜臨海部の自社製造拠点において一層の水素利活用に向けた検討を進めるとともに、近隣企業・自治体の水素導入につながるよう燃料電池等の水素エネルギーに関するソリューションを提供し、京浜地区の水素利活用の拡大に寄与する。

 川崎市は、2015年に「水素社会の実現に向けた川崎水素戦略」を策定、全国に先駆けて取組を推進してきた。更に2020年には脱炭素戦略「かわさきカーボンゼロチャレンジ2050」を策定、現在はカーボンニュートラルコンビナートの構築に向けた検討を進めており、COフリー水素等のカーボンニュートラルなエネルギーの供給拠点形成を目指す。

 また、国土交通省では、港湾分野においてカーボンニュートラルポートの形成に取り組んでいるほか、空港分野におけるCO削減に関する検討会及び航空機運航分野におけるCO削減に関する検討会を設置し、航空分野での脱炭素の検討を進めている。今後、東京国際空港におけるカーボンニュートラルに向けた方策について検討が進む中で、水素の利活用についても議論されることが期待され、多摩川スカイブリッジの開通による近接性の向上等も踏まえ、こうした動きとも連携を図る。

 今後、市が仲介役となり、今回の7者で緊密に連携するとともに、近隣企業・自治体、関係省庁との連携の強化も進める。