エア・ウォーター独自技術の立方晶SiC材料が銅や銀、薄膜ダイヤモンドを超える高い熱伝導率

国際学術雑誌「Nature Communications」に掲載

 エア・ウォーターは、大阪公立大学、東北大学、イリノイ大学、ジョージア工科大学らの研究グループと共同で、エア・ウォーター独自技術による立方晶SiC材料(3C-SiC)が、銅や銀などを超える高い熱伝導率を示すことを実証し、その成果が国際学術雑誌「Nature Communications」に掲載された。

3C-SiC 自立基板
3C-SiC 自立基板

概要

 エア・ウォーターは、Si(シリコン)基板上に高品質なSiC(シリコンカーバイト)結晶を成長する世界唯一の独自技術を開発し、これを応用して、2012年にGaN(窒化ガリウム)成長用下地基板として、大口径(最大、直径200 mm)の「SiC on Si基板」を製造販売している。

 SiC on Si基板にGaNを成長すると、Si基板上に成長した場合に比べてGaNの結晶性改善や厚膜化、これに伴うGaNデバイスの高性能化が可能となり、さらに基板のSiC薄膜は、ダイヤモンドなどの高性能半導体材料との接合にも適することが分かっている。

 SiCには六方晶、立方晶など、原子配列の異なる複数種類の結晶が存在するが、エア・ウォーターの「Si基板上に成長したSiC」は、立方晶であることがその大きな特徴で、「3C-SiC」と呼ばれている。立方晶SiC材料は、Si基板上に成長できることから、高放熱性半導体材料の代表格であるダイヤモンド結晶などと比べて、より低コストで大口径な基板の作製が可能であり、他の半導体材料と組み合わせることにより、高放熱性を必要とする様々なパワー半導体や高周波半導体の実現に大きく貢献することができる。

 今回の共同研究では、エア・ウォーターの高品質かつウェーハスケールの立方晶SiC自立基板において、銅、銀、六方晶SiCの物性をいずれも上回る熱伝導率を確認した。さらに同社の立方晶SiC薄膜は、同じ厚さのダイヤモンド薄膜よりも高い、記録的な熱伝導率を有することが判明した。今回の結果は、エア・ウォーターの立方晶SiCが、他に類を見ない高純度かつ高い結晶品質を有しており、これに起因する3C-SiC結晶本来の良好な熱伝導率を、世界で初めて実証したものとなる。

 本成果は、Nature Publishing Groupが刊行する国際学術雑誌「Nature Communications」に、2022年11月24日 (木)12時にオンライン速報版として掲載された。

成果詳細のPDFおよびURL

参考:研究の背景と狙い

 現在、パワー半導体分野では、車載用途の拡大などに伴い、半導体デバイスの取り扱い電流・電圧が増加の一途をたどっている。一方、高周波半導体分野では、より高い周波数の電波を取り扱うために、デバイス寸法の微細化が進んでいる。これらに伴い、パワー半導体や高周波半導体内部の局所的な発熱量も年々増加傾向にあり、これを速やかに放熱するための高放熱性半導体材料が強く求められている。

 高放熱性半導体材料の代表格としてダイヤモンドがよく知られているが、高価で小口径基板である点が実用化の障壁となっている。また、ダイヤモンド以外の半導体材料では、これまでのところ、放熱材料としてよく使われる銅や銀の熱伝導率よりも低い熱伝導率の報告例しかなかった。一方で、立方晶SiCは結晶構造が単純なことから、熱伝導率が高いとされてきたが、これまでは理論値レベルの高い熱伝導率の実証はできておらず、また、海外で作製された立方晶SiCの熱伝導率の報告値は、六方晶SiCよりも低い値にとどまっていた。

 本研究では、日本の解析技術およびエア・ウォーターの結晶成長技術を用いて、立方晶SiCの熱伝導率は、銅や銀、六方晶SiC、薄膜ダイヤモンドのいずれの材料よりも高いことを実証した。高い熱伝導率が結晶の純度・品質が高いことに起因することを解明したことで、従来手掛けている窒化ガリウム半導体向けの下地材料だけでなく、放熱材料としての用途にも使用されることが期待できる。