東京ガス「千住水素ステーション」で、AEM水電解装置の水素製造・販売を開始

小型モジュール30機を組み合わせ15Nm3/hのCO2フリー水素を製造

 東京ガス株式会社(社長:笹山晋一、以下「東京ガス」)は2023年7月13日、東京都荒川区の「千住水素ステーション」(以下「本ステーション」)で、AEM*1水電解装置を使用した水素の製造・販売を国内で初めて開始した。

 本ステーションは、2016年の営業開始以来、敷地内で都市ガスから製造した水素を販売。2022年度末から非化石証書*2が付与された実質再生可能エネルギー100%の電気に切り替えを行うとともに、今回、Enapter(エナプター)社製のAEM水電解装置を導入し、CO2フリー水素の製造・販売を実現した。

 AEM水電解装置は、他の水電解方式と比べて新しい技術であり、採用実例がまだ少ない。構造がシンプルで、小型のモジュールを組み合わせることで水素製造量を柔軟に調整可能であることや、スペースが限られる場所への導入が期待できること、セル部材*3に用いる材料の選択肢が広く、セルスタックの低コスト化が可能であることなどの特長を有する。

 東京ガスは、「千住水素ステーション」への導入を通じて、今後更なるAEM水電解装置の適切なシステム構成や運転管理等の知見獲得を進める。その上で、工場や水素ステーション等において、水素使用量実態に応じた規模のAEM水電解装置の導入支援や、水素供給ビジネスの展開を目指すとしている。

AEM水電解装置の詳細仕様

AEM水電解装置モジュール外観
AEM水電解装置モジュール外観
メーカーEnapter(エナプター)
吐出圧力0.8MPa
水素純度>99.999%*4
消費電力量4.8kWh/Nm3
消費水量0.4L/Nm3
水素製造量0.5Nm3/h・モジュール

導入設備の概要

 「千住水素ステーション」には、Enapter(エナプター)社製AEM水電解装置30モジュールを組み合わせ、水素製造量15Nm3/h規模の設備を導入した。モジュール単位で操作が可能で、単体で障害が発生した際も設備全体の運転を継続できる冗長性を備えている。

 また、水素製造装置の稼働率を上げるために、夜間も水素製造を行い、併せて導入した水素タンクに1MPa未満で貯蔵する。

導入したAEM水電解装置と水素タンクの全景
導入したAEM水電解装置と水素タンクの全景
コンテナ内のAEM水電解装置
コンテナ内のAEM水電解装置

システム全体フロー図

システム全体フロー図

 東京ガスグループでは、経営ビジョン「Compass2030」で掲げた「CO2ネット・ゼロへの挑戦」に向け、脱炭素化に向けた技術開発の早期実現を図り、CO2ネット・ゼロをリードすることで、政府が掲げる「2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現」に貢献するとしている。

*1:Anion Exchange Membrane(陰イオン交換膜)の略称。

*2:再生可能エネルギー指定有の非化石証書。

*3:触媒、セパレータ、イオン交換膜、集電体等のセル構成部品。

*4:ドライヤー(除湿装置)により水分を除去した後の純度。

千住水素ステーション概要

営業開始日2016年1月12日
所在地東京都荒川区南千住3-28-1
敷地面積約950m2
充填圧力82MPa
供給方式オンサイト方式