水島コンビナートでCO2フリー水素の利活用に関する共同検討を開始

ENEOSとJFEスチール、メチルシクロヘキサンによる水素の受入・貯蔵・供給と試験高炉での燃料水素利活用

 ENEOSとJFEスチールは、水島コンビナート(岡山県倉敷市)におけるCO2フリー水素の利活用に関する共同検討を開始した。

水島コンビナート 航空写真(倉敷市提供)
水島コンビナート 航空写真(倉敷市提供)

 両社が事業拠点を構える水島コンビナートには多くの産業が集積し、将来的に大規模な水素利用が期待される。両社はこのエリアにおいてCO2フリー水素の受入・貯蔵・供給拠点の整備および利活用に関する検討を行う。2030年までにCO2フリー水素サプライチェーン構築を目指し、2030年以降の水素利用拡大を見据えたサプライチェーンの拡大と脱炭素社会の実現に向けた水素の有効な利用方法についても検討する。

 ENEOSは、水素の貯蔵・運搬に適した水素キャリアである有機ハイドライド(LOHC※1)の一種、「メチルシクロヘキサン※2(MCH)」を用いた水素サプライチェーンの構築を検討しており、具体的には水島製油所において水素の受入・貯蔵・供給に向けて検討を行う。MCHは石油に似た性状の液体であり、製油所等の既存インフラを活用することで投資を抑制し、将来的にコスト競争力のある水素供給を可能にする。

 一方、JFEグループは「JFEグループ環境経営ビジョン2050」※3を策定し、気候変動問題への対応を経営の最重要課題と位置付け、その解決に向けた取り組みを強力に推進している。カーボンリサイクル高炉や水素直接還元製鉄など、さまざまな超革新技術の開発に複線的に検討しており、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の研究開発委託・助成事業 JPNP21019「グリーンイノベーション基金事業※4/製鉄プロセスにおける水素活用プロジェクト」で「外部水素や高炉排ガスに含まれるCO2を活用した低炭素化技術等の開発」 に取り組む。2029年の実証開始を目指し西日本製鉄所(倉敷地区)で試験高炉を検討中であり、この試験炉や製鉄所内の燃料用途としての水素利活用を見込んでいる。

※1 Liquid Organic Hydrogen Carrier:液体有機水素キャリア
※2 水素ガスの500分の1の容積で常温常圧の液体。貯蔵や輸送等、取り扱いが容易なことが特徴
※3 JFEホールディングス(株) 気候変動問題への取り組み
※4 2020年12月25日に経済産業省が関係省庁と策定した「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」の中で「経済と環境の好循環」を作り出すために組成された基金:「NEDO グリーンイノベーション基金とは」