Atomisが「SusHi Tech Tokyo 2025」に次世代高圧ガス容器「CubiTan」を出展

多孔性配位高分子(PCP/MOF)の気体制御で環境・エネルギー問題の解決

 京都大学発ベンチャーで次世代多孔性材料の開発を行う(株)Atomis(アトミス、所在地:兵庫県神戸市、浅利 大介 代表取締役)は2025年5月8日・9日、東京ビッグサイトで開催された「SusHi Tech Tokyo 2025」で多孔性配位高分子(PCP/MOF)を活用した次世代高圧ガス容器「CubiTan®」の試作機をブース展示した。

次世代高圧ガス容器「CubiTan®」
次世代高圧ガス容器「CubiTan」

 東京都などが主催する「SusHi Tech Tokyo 2025」は、「Sustainableな都市をHigh Technologyで実現する」をコンセプトに掲げる、アジア最大級のスタートアップ・カンファレンスで、持続可能な都市の未来についてオープンに議論し、イノベーションやスタートアップの成長につながる新たな出会いを創出することを目的とする。

 オールジャパンエコシステムエリア内の関西パビリオンに出展したAtomisは、多孔性配位高分子(PCP/MOF)のサンプルや、インドネシアで実証が進められているメタン用途のCubiTanを展示して、革新的なガスの流通システム構築や分散型カーボンリサイクルによる脱炭素のソリューションなど、ガスの制御による環境・エネルギー問題の解決に向けた提案を行った。

 PCP/MOFは高い比表面積や構造の柔軟性など、従来の活性炭やゼオライトなどの多孔性材料とは異なる性質を有する。このため物質の選択的な分離・吸着や、大幅な貯蔵効率の向上など様々な機能が期待でき、幅広い業界、用途への応用が検討されている。

 AtomisはPCP/MOFの世界的なパイオニアである京都大学iCeMSと連携し、10万種以上からなる独自の構造データベースPOROS™を構築。独自製法によるPCP/MOF量産化のため、2023年に専用製造設備としては世界有数の規模を誇る自社のパイロットプラントを竣工するなど、社会実装のための供給体制を整備した。すでにPCP/MOFのマテリアル事業として、冷媒リサイクルや消臭、樹脂の高機能化などの分野で実用化が進んでいる。

Atomisのブース
Atomisのブース

 CubiTanは、この次世代の新素材である多孔性配位高分子(PCP/MOF)を吸着材に活用した高圧ガス容器としてAtomisが開発しているもので、分散型ガスシェアリングのスマートグリッド構築を目指す。容器に炭素繊維強化プラスチック(CFRP)を採用し軽量化、コンパクトなキューブ型のため積層可能で省スペース性に優れる。また、容器にIoT機能モジュールを搭載し、クラウド対応の管理システムと連携することでスマートな流通網(在庫管理、受発注対応、配送状況把握、配送ルート最適化など)の実現を構想している。

 CubiTanを活用したスマートガスネットワーク構築事業は、インドネシアなどASEAN地域で実現可能性調査(FS)が進められているほか、2025年2月には東京都の水素の運搬・貯蔵に関する技術研究開発・実証にも八千代エンジニアリング、TERBAIKと共同で採択された。

 また、AtomisではPCP/MOFを活用したインパクト事業として、工場排ガスなど大気中からCO₂を回収し、CO₂を炭素源としてギ酸やメタノールなどの有用な基礎化学原料を生成する、小規模分散型カーボンリサイクルシステムの確立にも取り組む。2023年度のNEDO事業インキュベーション研究開発に採択された「革新的MOF吸着剤を用いた、製造プロセスからのCO₂分離・回収システム」のプログラムは、2025年4月から実用化開発フェーズに移行しており、次世代多孔性材料を活用したエネルギー効率の高い脱炭素システム構築を目指す。