レゾナックHD 2024年12月期第2四半期連結決算

産業ガスを含む化学品の売上高は前年同期並み、一部製品の原料高により減益

 レゾナック・ホールディングスの2024年12月期第2四半期連結決算は、売上高6685億4700万円(前年同期比8.5%増)、営業利益279億7400万円(前年同期は131億6500万円の損失)、経常利益304億8500万円(同113億5700万円の損失)、親会社株主に帰属する純利益384億4500万円(同198億1700万円の損失)となった。

 売上高は、半導体・電子材料セグメントにおいて、半導体材料や HDメディアの需要が好調に推移した一方、ケミカルセグメントにおいて、黒鉛電極の数量が減少し、直近の業績予想を下回った。営業利益は、半導体・電子材料セグメントの増収を背景に、大幅に予想を上回った。経常利益は、営業利益の増益に加え、営業外損益の改善を背景に、大幅に予想を上回った。親会社株主に帰属する中間純利益は、経常利益の増益に加え、特別損益の改善を背景に、大幅に予想を上回った。

 通期の連結業績は、上期の業況を受けて、また、半導体・電子材料セグメントにおける需要が引き続き好調に推移することで増収増益を見込むことを背景に、売上高、営業利益、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益の予想をそれぞれ、上方修正した。これにより、2024年12月期の通期連結業績予想は、売上高1兆3920億円(前年同期比8.0%増)、営業利益610億円(前年同期は37億6400万円の損失)、経常利益510億円(同147億7300万円の損失)、親会社株主に帰属する純利益345億円(同189億5500万円の損失)とした。年間配当金予想に変更はない。

関連するセグメント別概況

【半導体・電子材料セグメント】

 半導体材料は前年同期からの半導体市況の緩やかな回復により増収。デバイスソリューションは、HDメディアがデータセンター向け需要の回復により大幅な増収、SiCエピタキシャルウェハーも販売数量の増加で増収となった。セグメント売上高は2096億0200万円(前年同期比36.6%増)、営業利益は216億円(前年同期は130億9800万円の損失)。

【ケミカルセグメント】

 石油化学は、誘導品の定修の影響で販売数量が減少したものの、ナフサ価格上昇に伴って販売単価が上昇したことにより増収増益。産業ガスを含む化学品は、売上高は前年同期並み、一部製品の原料高により減益となった。黒鉛電極は、市況低迷の影響を受けた販売数量の減少及び販売単価の下落により減収減益。セグメント売上高は、2454億0700万円(前年同期比3.7%減)、営業利益は20億4100万円(同57.2%減)。

レゾナック、世界初となる使用済みプラスチックをリサイクルしたアンモニアの燃料用途供給

アンモニア燃料船にTruck to Ship方式で「ECOANN(エコアン)」を供給

 レゾナックは2024年7月17日、日本郵船が世界初*1の商用のアンモニア燃料船として8月下旬に竣工する予定のアンモニア燃料タグボート(以下、A-Tug)に、レゾナック製の環境性能の高い低炭素アンモニアを供給した。供給したアンモニアは使用済みプラスチックをリサイクルして製造したものを使用、使用済みプラスチック由来のアンモニアを燃料用途で供給するのは世界初*2になる。

Truck to Ship方式による低炭素アンモニア供給 

 A-Tugへの燃料アンモニア供給は横浜市港湾局の協力のもと、横浜港本牧ふ頭で実施された。Truck to Ship方式*3での船舶への燃料アンモニアの供給は世界初*4。供給に先立ち、日本郵船、JERA、レゾナックをはじめとした関係者は協議を重ね、供給に関わる安全な運用方法の確立、港湾地区への安全な輸送・受け入れ体制の構築に取り組み、世界初となる燃料供給作業を安全かつ円滑に完了した。

 アンモニアは燃焼しても二酸化炭素(CO2)を排出しないため、地球温暖化対策に貢献する次世代燃料として注目されている。A-Tugに供給するレゾナックのアンモニア「ECOANN(エコアン)」は、家庭や企業からゴミとして排出される使用済みプラスチックを原料の一部に使用して「プラスチックケミカルリサイクル」により製造する。レゾナックで製造するアンモニアは、製造過程で化石燃料や化石燃料由来のエネルギーを使わないことで「CO2排出80%強削減」を実現*5した。レゾナックは、1931年に川崎事業所で日本最初の国産技術を使ったアンモニアの生産に成功して以来、90年以上にわたり日本のアンモニアの安定供給に貢献してきた。長年蓄積したノウハウを活かして、低炭素アンモニアを安定的に製造し、船舶まで安全に輸送提供する。

ケミカルプラスチックリサイクル(KPR)

 レゾナック川崎事業所(神奈川県川崎市)は、2003年から使用済みプラスチックを水素やアンモニアなどの化学品原料にリサイクルする「プラスチックケミカルリサイクル」(「川崎プラスチックリサイクル(KPR)」と呼称)を実施している。使用済みプラスチックを原料に、高温でガス化し分子レベルまで分解して水素とCO2を取り出す。定常運転中に化石燃料をまったく使用しない。ここで取り出された水素の一部は近隣プラントにて化学原料向けや水素ステーションにて燃料電池自動車向けに活用。そのほかは主にアンモニアの原料になり合成繊維、合成樹脂、化学肥料、薬品などに使われる。一方のCO2は大気中に放出することなくグループ会社でドライアイスや炭酸飲料、医療用炭酸ガス向けの原料に使用されるなど、資源循環を実現し持続可能で豊かな社会実現に向け活躍している。KPRは、ガス化ケミカルリサイクルを20年の長期にわたって安定運転している世界で唯一のプラント。

川崎プラスチックリサイクル(KPR)プラント 

*1日本郵船調べ。
*2レゾナック調べ。使用済みプラスチックをリサイクルして製造されたアンモニアを燃料用途に供給する事例は世界初。
*3Truck to Ship方式:船舶への燃料供給手法の一つで、タンクローリーよりフレキシブルホースを用い、船舶へ燃料を供給する方式。
*4日本郵船調べ。商業ベースで運航するアンモニア燃料船に対し、track to shipで燃料供給する事例は世界初。
*5使用済みプラスチックを100%原料にしたアンモニアと化石燃料を100%原料にしたアンモニアと比較したときに80%強のCO2排出量削減。
参考:2022年12月20日発表:CO2排出量80%強削減を確認、使用済みプラスチックから生まれた低炭素アンモニア

参考

レゾナック・ガスプロダクツ川崎工場で液化炭酸ガス増強設備を竣工

生産能力増強3万トン/年、貯蔵能力1千トン貯槽2基を増強

 レゾナック・ガスプロダクツは、川崎工場内(所在地:神奈川県川崎市川崎区扇町7-1)の液化炭酸ガスおよびドライアイス(以下、炭酸製品)の生産能力と貯蔵能力を増強する設備工事を竣工した。生産能力の増強は、炭酸ガス液化設備の更新および能力増強により3万トン/年、貯蔵能力の増強は1千トン貯槽×2基の計2千トンとなる。

 レゾナック・ガスプロダクツでは、親会社のレゾナック川崎事業所で行っている使用済みプラスチックのケミカルリサイクル事業において発生する炭酸ガスを原料としており、今回、炭酸製品の安定供給源として一層の有効活用を進めるとともに、液化設備の増強および貯槽タンクの増設により、顧客への安定供給体制を強化する目的で能力増強を行った。

 炭酸製品は、食品加工・包装用や飲料用、低温輸送・保管用途、電子部品製造を含む工業用途など幅広い分野で使用されているが、近年、炭酸製品の原料に使用できる原料用炭酸ガス供給元の減少や操業度低下により、恒常的に需給が逼迫した状況にある。

 国内の原料用炭酸ガスの供給事情は今後も厳しい状況が予想され、レゾナック・ガスプロダクツでは、原料ガスの探索、確保に向けた取り組みを継続するとともに、今回の増強設備を含めた設備の安全かつ安定的な運転により、炭酸製品の安定供給体制のさらなる強化に努めるとしている。

レゾナックが大分コンビナートでカーボンリサイクル事業の実現可能性調査に参画

CO2を原料とした化学品製造でCO2排出量を削減

 レゾナックは、日本の石油化学コンビナートの一つである「大分コンビナート」におけるカーボンリサイクル事業の実現可能性調査に参画する。化学メーカーとしての知見や技術を生かし、CO2を原料とした化学品製造の観点からCO2排出量削減に貢献する方法を検討する。 

 この実現可能性調査は、「大分コンビナートにおける産業間連携によるカーボンリサイクル事業の実現可能性調査*1」として、2024年3月11日にNEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)により採択されたもの。レゾナックは、大分市や近隣企業と産業間で連携してCO2排出量の削減を目指す本調査に参画し、主にカーボンリサイクル製品や製造技術の選定を実施する。

 「大規模産業集積型」であるコンビナートの特性をふまえた可能性を検討。大分コンビナートは、九州唯一の石油化学コンビナートで、製鉄・発電・石油精製・化学メーカーなどが存在し、カーボンニュートラルと持続可能な成長を継続するためにその特徴を生かした連携が進められている。

大分コンビナート企業航空写真(九州地方整備局提供)

 レゾナックは、「2050年カーボンニュートラル」に向けて、2021年に2030年のGHG排出量削減目標を、「2013年比30%削減」と設定している。本調査に参画することで、カーボンニュートラル化に向けてあらゆる選択肢を検討し、2050年カーボンニュートラル社会の実現への貢献を目指す。

*1  実施予定先:株式会社野村総合研究所、石油コンビナート高度統合運営技術研究組合、一般財団法人カーボンフロンティア機構。レゾナックは、石油精製・石油化学関連企業を担当する石油コンビナート高度統合運営技術研究組合から再委託。(NEDOウェブサイト: https://www.nedo.go.jp/koubo/EV3_100273.html

(参考)
2024年4月2日発表:CCS共同検討に関する覚書を三井物産と締結
*CCS(Carbon dioxide Capture and Storage):二酸化炭素(CO2)の回収・貯留

世界初のTruck to Ship方式による燃料アンモニア供給を実施

レゾナックの低炭素アンモニアを横浜港でアンモニア燃料タグボートに供給

 レゾナックは、日本郵船、JERA、新日本海洋社、東京パワーテクノロジーとともに、2024年6月に竣工する予定のアンモニア燃料タグボート(以下、A-tug)に対して、5月下旬に燃料アンモニアの供給を実施する。Truck to Ship方式*1での船舶への燃料アンモニアの供給は世界初*2。2024年4月10日から東京ビッグサイトで開催された日本最大の国際海事展「Sea Japan 2024」で、関係各社が参加して発表式を実施した。

発表式
(左から、日本郵船 横山勉執行役員、JERA 加藤雄一郎LCFバリューチェーン統括部長、新日本海洋社 加藤毅代表取締役社長、東京パワーテクノロジー 嶋田修執行役員、 レゾナック 足立浩業務執行役基礎化学品事業部長)

*1  Truck to Ship方式:船舶への燃料供給手法の一つで、タンクローリーよりフレキシブルホースを用い、船舶へ燃料を供給する方式。*2  日本郵船調べ。商業ベースで運航するアンモニア燃料船に対し、Truck to Shipで燃料供給する事例は世界初。

 2023年12月に日本郵船、JERA、レゾナックの3社が燃料アンモニアの船舶への供給に向けた共同検討に関する契約を締結し、その後安全な運用方法の確立、港湾地区への輸送・受け入れ態勢の構築、供給に関する諸ルールの形成に向けた関係各所への働きかけなどを、協力して取り組んできた。

(参考)2023年12月13日発表:世界初!船舶へのアンモニア燃料供給の実現に向けて日本郵船・JERAと共同契約を締結

 今回、安心・安全な燃料アンモニアの船舶への供給の目途が立ったことで、タンクローリー車から竣工間近のA-Tugへアンモニアを横浜港にて供給することを決定した。供給は5月下旬に行うことを予定。供給する製品はレゾナックの低炭素アンモニアで、家庭や企業からゴミとして排出される使用済みプラスチックを原料の一部に使用して製造されている。アンモニアの製造過程で発生する二酸化炭素は、すべてドライアイスや炭酸飲料等の原料に活用されるなど資源循環を実現した。

レゾナック 足立 浩 基礎化学品事業部長のコメント要旨

 「世界初のアンモニア船への燃料供給に携われることを大変光栄に思っています。当社の役割は、燃料に使われるアンモニアを安定的に生産し、船舶まで安全に輸送を行うことです。当社は1931年に川崎事業所で日本最初の国産技術を使ったアンモニアの生産に成功して以来、90年以上にわたり日本のアンモニアの安定供給に貢献してきました。長年蓄積されたノウハウを活かし、本プロジェクトに貢献していきます。
 今回のプロジェクトで供給するアンモニアの一部は、使用済みプラスチックをリサイクルしたもので、環境に配慮した製品です。当社はガス化ケミカルリサイクルによる低炭素なアンモニアを20年以上の長期にわたり生産しており、本プロジェクトのコンセプトである脱炭素にもマッチする、アンモニアを提供できることを大変嬉しく思います」

レゾナック、CCS共同検討に関する覚書を三井物産と締結

大分コンビナート排出のCO2回収とマレーシア沖貯留を検討

 レゾナックは三井物産と、レゾナック大分コンビナートで排出されるCO2(二酸化炭素)を回収してマレーシア沖の地下へ貯留する「CCS*1」に関する共同検討の実施について、覚書を締結した。

 三井物産は、マレーシア国営石油会社などとマレーシア沖でのCCSプロジェクトを共同で進めており、本覚書の締結は、同プロジェクトを貯留地として想定し検討する。プロジェクトを通じ、レゾナックにおけるCO2の回収、CO2貯留サイト*2での貯留(CCS)および輸送などを含むバリューチェーン構築を目指す。

大分コンビナート航空写真

 石油化学産業はCO2排出量が多く、削減が課題となっている。このため、産業全体での取り組みが求められている。レゾナックは「2050年カーボンニュートラル」に向けて、CO2排出量削減のためにさまざまな検討を重ねた結果、三井物産のマレーシア沖でのCCS事業は、独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)の先進的CCSに採択*3されており、早期実現性が高く、今後の効果が期待できると判断し、本共同検討に合意した。

 レゾナックは大分コンビナートで排出されるCO2の分離・回収と液化・貯蔵、輸送事業者への引き渡しを、三井物産はマレーシアまでの液化CO2の海上輸送とマレーシア沖での地下貯留を担い、それぞれで必要な技術的要件の検証およびコストの概算などの検討を進める。

 レゾナックは、「2050年カーボンニュートラル」に向けて、2021年に2030年のGHG排出量削減目標を、「2013年比30%削減」としている。低炭素社会実現に向け、2030年におけるGHG排出量削減目標の達成に向け排出量の削減とさらなる省エネルギーを推進。本共同検討を通じたCCSの早期導入検討をはじめ、脱炭素化に向けてあらゆる選択肢を検討することで、2050年カーボンニュートラル社会の実現への貢献を目指す。

*1. Carbon dioxide Capture and Storage:二酸化炭素(CO2)の回収・貯留
*2. マレーシア国営石油会社Petroliam Nasional Berhad(ペトロリアム・ナショナル・ブルハド)のCCS事業会社PETRONAS CCS Solutions Sdn Bhd(ペトロナス・シーシーエス・ソリューションズ)および仏総合エネルギー会社TotalEnergies(トタール・エナジーズ)のCCS事業会社TotalEnergies Carbon Neutrality Ventures(トタール・エナジーズ・カーボン・ニュートラリティ・ベンチャーズ)と2023年6月から共同開発を進め、2030年ごろまでの貯留事業開始を計画するマレーシア沖のCO2貯留サイト。参考:2023年6月27日 三井物産 マレーシアにおけるCCS事業の共同開発に関する契約締結
*3. 独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)の令和5年度「先進的CCS事業の実施に係る調査」に関する委託調査業務として、三井物産のマレーシア沖CO2貯留サイトが採択

レゾナック、半導体材料製造過程での廃棄物を半導体ガス原料へ循環

使用済みプラスチックからケミカルリサイクル技術で水素と炭酸ガス生成

 レゾナックは、半導体材料の製造過程で生じる使用済みプラスチックを自社のケミカルリサイクル技術※1を活用して水素や炭酸ガスに換え、資源として循環させる検討を開始した。2024年1月末に初回の実証試験を行い、技術的に問題なくガス化できることを確認した。

 今回試験に使用した使用済みプラスチックは、山崎事業所の感光性フィルムと、五井事業所のダイボンディングフィルムの製造過程から発生したもの。試験ではRPF※2に加工後、川崎プラスチックケミカルリサイクル事業(KPR※3)で分子レベルまで分解、水素及び炭酸ガスを生成した。水素はアンモニアの原料として、半導体製造用の高純度ガスを始め、繊維や接着剤の原料、窒素系肥料などに利用される。炭酸ガスは大気中に放出することなく、ドライアイスや飲料用炭酸として再利用する。

 半導体材料の使用済みプラスチックは、現状ではRPFに加工し、焼却されている。今回の実証実験で使用済みプラスチックを焼却せずにガス化することでCO2排出量を削減できる。

 近年、AI、モバイル端末、自動運転などの進化に伴い、半導体の使用量は年々増加している。半導体の製造過程で排出されるCO2量をはじめ、環境への負荷も増大しており、サプライチェーン全体で環境配慮の要求は年々高まっている。

 レゾナックは、環境負荷やCO2排出量の削減に向けた取り組みを積極的に進めており、製品のライフサイクル全体を見据えた環境配慮型の製品開発を推進。今回の取り組みもその一環で、また、事業の垣根を越えた共創として推進している。この実証試験は、今後も対象の事業所を増やし、効果や事業性をさらに調査していく予定。

※1 使用済みプラスチックを分子のレベルまで分解して水素とCO2を取り出し、アンモニアやドライアイスを製造する。
※2 Refuse derived paper and plastics densified Fuel の略称。主に産業系廃棄物のうち、マテリアルリサイクルが難しい使用済みプラスチック類などを主原料とした固形燃料。
※3 世界で唯一20年にわたり安定運転しているガス化ケミカルリサイクルプラント。2003年に稼働開始し、日本のケミカルリサイクルの約22%に相当する年間約7万トンの使用済みプラスチックをガス化している。KPRで取り出された水素の一部は近隣プラントで化学原料向けや燃料電池自動車向けに活用されるほか、環境調和型アンモニア「エコアン®」の原料となる。またCO2は大気中に放出することなくドライアイスや炭酸飲料、医療用炭酸ガス向けの原料に使用されるなど、資源循環を実現している。

川崎プラスチックリサイクル(KPR)プラント

レゾナック、川崎プラスチックケミカルリサイクル事業(KPR)設立20周年式典を開催

川崎市の臨海コンビナートとの連携、プラスチックガス化モデルのライセンス展開、繊維原料への資源循環の実証などを紹介

 レゾナックは2024年3月13日、同社川崎事業所のプラスチックケミカルリサイクル事業(以下、「KPR」)*1が稼働開始から20周年を迎えたことを記念し、川崎日航ホテルにて記念式典を開催した。式典には、地元・川崎市の福田紀彦市長をはじめ、日頃プラント運営に携わる企業、KPRで使用済みプラスチックをリサイクルして生み出されたアンモニア・水素の取引先、今後の共創パートナー企業など、事業を共に支えているステークホルダーとレゾナック関係者約120名が出席し、レゾナックから感謝を伝えるとともに今後の発展を祈念した。

川崎プラスチックケミカルリサイクル事業(KPR)設立20周年式典

 式典ではレゾナックの髙橋秀仁社長より、川崎市をはじめとするステークホルダーに対して「当社の目指すべき姿は『共創型の化学会社』です。KPRはさまざまなパートナーの皆さまのご支援により、稼働開始から20年を迎えることが出来ました。改めて感謝申し上げます。当社は、サステナビリティを経営の根幹に据えております。その中、今時代が求めているカーボンニュートラルの取り組み、循環型社会を支える仕組みとして、KPRは世界に誇るべき技術だと考えております。20年の苦労を共にした皆さまとともに、KPRの技術をここ川崎から世界に展開し、新たな共創の輪を構築してまいります」と感謝の気持ちを伝えた。

 続いてKPRを管轄する基礎化学品事業部より、KPRの20年間の歩みを紹介。また、将来に向けた取り組みとして、川崎市が推進する「川崎カーボンニュートラルコンビナート構想」「川崎臨海部ビジョン」実現に向けた川崎市の臨海コンビナート各社との連携、日揮ホールディングスを通じたプラスチックガス化モデルの国内外へのライセンス展開や、伊藤忠商事との「ARChemia (アルケミア)プロジェクト」による繊維原料への資源循環の実証実験など、脱炭素社会、循環型社会の実現に向けた共創パートナーとの活動を紹介した。

 レゾナックは2003年より、使用済みプラスチックをアンモニアなどの化学品原料にリサイクルするプラスチックケミカルリサイクル事業に取り組んできた。KPRはガス化ケミカルリサイクルを20年の長期にわたって安定運転している世界で唯一のプラントであり、2022年1月には、使用済みプラスチックのリサイクル量が累計100万トンを達成した。レゾナックでは今後も、KPRをサステナビリティ戦略を代表する事業のひとつとして位置付け、脱炭素社会・資源循環型社会の構築に貢献する。

*1.プラスチックケミカルリサイクル事業(KPR)
 KPRでは使用済みプラスチックを原料に、高温でガス化し分子レベルまで分解して水素とCO2を取り出す(ガス化ケミカルリサイクル)。定常運転中には化石燃料をまったく使用しない。ここで取り出された水素の一部は近隣プラントにて化学原料向けや水素ステーションにて燃料自動車向けに活用され、そのほかは主にアンモニアの原料になり合成繊維、合成樹脂、化学肥料、薬品などに使われる。

 一方のCO2は大気中に放出することなくグループ会社でドライアイスや炭酸飲料、医療用炭酸ガス向けの原料に使用されるなど、資源循環を実現し持続可能な豊かな社会実現に向け活躍する。KPRは2015年より環境省の「地域循環型水素地産地消モデル実証事業」に採択されているほか、2016年の「エコマークアワード銀賞」受賞、2020年の「グリーン購入ネットワーク経済大臣賞」受賞など、その取り組みが高く評価、期待されている。

KPR20年の歩み

過去のKPR関連ニュースリリース

レゾナックHD 2023年12月期通期連結決算

産業ガスを含む化学品は価格転嫁が進み製品販売価格上昇、増益

 レゾナック・ホールディングスの2023年12月期通期連結決算は、売上高1兆2888億6900万円(前年同期比7.5%減)、営業損益37億6400万円の損失(前年同期は617億2600万円の営業利益)、経常損益147億7300万円の損失(同617億1100万円の経常利益)、親会社株主に帰属する純損益189億5500万円の損失(同324億2200万円の純利益)となった。

関連するセグメント別概況

【半導体・電子材料セグメント】

 半導体前工程材料および半導体後工程材料は、前連結会計年度後半からの半導体市場の低迷により減収。デバイスソリューションは、SiCエピタキシャルウェハーが増収となったものの、HDメディアが前年第4四半期からのデータセンター向け需要低迷が継続したことにより、大幅減収となった。セグメント売上高は3381億2600万円(前年同期比20.8%減)、営業損益は、HDメディアの棚卸資産において、低価法による簿価切り下げや廃棄損を計上し、94億2200万円の損失(前年同期は455億3300万円の営業利益)。

【ケミカルセグメント】

 石油化学は4年に一度の定修停止があった前連結会計年度比で数量増となったものの、ナフサ価格の下落により製品販売価格が下落し減収、営業利益はスプレッドの改善等で増益だった。産業ガスを含む化学品は、原燃料価格上昇に対応した価格転嫁が進み製品販売価格は上昇したが、一部製品で数量減となり売上高は前連結会計年度並み、営業利益は利幅回復により増益となった。黒鉛電極は販売数量、製品販売価格ともに前連結会計年度比で下落し減収、営業利益も受払差のマイナス影響に加えて棚卸資産の評価損により減益だった。セグメント売上高は5163億3300万円(前年同期比2.2%減)、営業利益は77億1800万円(同69.0%減)。

2024年12月期通期見通し

 2024年12月期の通期見通しは、半導体・電子材料業界における需要および在庫調整の動向は底を打ち回復に向かうと予想。回復しつつある半導体需要を背景に半導体材料等コア成長事業への積極的な設備投資を続けるとともに、引き続き事業ポートフォリオ改革、諸施策を進める。

 2024年12月期の通期業績予想は、売上高1兆3300億円(前年同期比3.2%増)、営業利益280億円(前年同期は37億6400万円の損失)、経常利益130億円(同147億7300万円の損失)、親会社株主に帰属する純利益100億円(同189億5500万円の損失)を見込む。年間配当金の予想は前年実績65円を維持した。


船舶へのアンモニア燃料供給実現でレゾナックと日本郵船・JERAが共同契約を締結

2024年6月竣工予定のA-Tugへアンモニア燃料供給

 レゾナックは、日本郵船、JERAと、世界初となる船舶へのアンモニア燃料供給の実現に向けて、2023年12月12日、共同検討契約を締結した。

A-Tug CG画像(提供 日本郵船株式会社)

 現在、日本郵船はNEDOのグリーンイノベーション基金事業(注)として、アンモニア燃料国産エンジンを搭載したタグボート(以下「A-Tug」)の研究開発を他パートナー会社と進めており、2024年6月に横浜港での竣工を予定している。アンモニアを舶用燃料として利用することで、航海中の温室効果ガス(Greenhouse Gas、以下「GHG」) 排出量を従来よりも大幅に削減することが可能となり、将来的には船舶のゼロエミッション化に大きく寄与することが期待される。

 レゾナックと日本郵船、JERAの3社は、24年のA-Tug竣工に向けて、次の3つの共同検討を進める。①燃料供給に係る安全な運用方法の確立、②燃料アンモニアの港湾地区への輸送・受入体制の構築、③船舶用燃料供給に関するルール形成に向けた関係各所へのはたらきかけ。

 アンモニアは燃焼しても二酸化炭素(CO2)を排出しないため次世代燃料として期待されている。レゾナックは、1930年代よりアンモニアを製造・販売しており、輸送・供給などのアンモニアの安全な取扱いに関して豊富な知見を持つ。世界で初めてとなる船舶への安全・安心なアンモニア燃料供給の実現に取り組むとともに、カーボンニュートラルの実現へも取り組む。

(注)グリーンイノベーション基金事業:「2050年カーボンニュートラル」に向けてエネルギー・産業部門の構造転換や、大胆な投資によるイノベーションといった現行の取組を大幅に加速するため、NEDOに2兆円の基金を造成し、官民で野心的かつ具体的な目標を共有した上で、これに経営課題として取り組む企業等に対して、最長10年間、研究開発・実証から社会実装までを継続して支援する基金制度。グリーン成長戦略において実行計画を策定している重点14分野を中心に支援が行われる。

NEDO事業の概要

次世代船舶の開発 グリーンイノベーション基金事業、「次世代船舶の開発」に着手 | ニュース | NEDO

(参考)レゾナックのアンモニア関連リリース

2022年11月18日  CO2排出量80%強削減を確認、使用済みプラスチックから生まれた低炭素アンモニア
CO2排出量80%強削減を確認、使用済みプラスチックから生まれた低炭素アンモニア | News Releases | Resonac

2023年5月18日 使用済みプラスチックを原料としたサプライチェーンで国内初の国際認証取得
使用済みプラスチックを原料としたサプライチェーンで国内初の国際認証取得 | News Releases | Resonac

2023年9月14日 岐阜大学、三菱化工機、レゾナック「アンモニア・水素利用分散型エネルギーシステム」の研究開発で協働開始
岐阜大学、三菱化工機、レゾナック「アンモニア・水素利用分散型エネルギーシステム」の研究開発で協働開始 | News Releases | Resonac

レゾナック・ガスプロダクツ 役員異動、部門長異動、関係会社社長の人事異動

代表取締役に山口 立太氏、平倉 一夫代表取締役は相談役に就任

 レゾナック・ガスプロダクツは、代表取締役の交代を含む次の役員・部門長・関係会社社長の人事異動を行う。()内は現職

役員の異動

1. 執行役員の就退任および委嘱事項変更

(1) 新任執行役員 (2024年1月1日付)

 ▽社長執行役員 事業本部長=山口 立太( (株) レゾナック 基礎化学品事業部 化成品部長)

(2) 退任執行役員 (2023年12月31日付)

 ▽退任[2024年1月1日付で相談役]=平倉 一夫(社長執行役員)
 ▽退任[2024年1月1日付で社長付嘱託]=松岡 清文(執行役員
事業本部長)

2. 取締役、監査役の就退任

(1) 新任取締役 (2024年1月4日開催の臨時株主総会にて新任予定)

 ▽代表取締役=山口 立太( (株) レゾナック 基礎化学品事業部 化成品部長)
 ▽取締役=足立 浩( (株) レゾナック 機能材料事業本部 機能性化学品事業部長)

(2)退任取締役 (2024年1月4日開催の臨時株主総会にて退任予定)

 ▽退任=平倉 一夫(代表取締役)
 ▽退任=松岡 清文(取締役)
 ▽退任=原 聡(取締役)

(3)監査役の就退任
新任監査役 (2024 年 3 月下旬開催の定時株主総会にて選任予定)

 ▽常勤監査役=松岡 清文(取締役 執行役員 事業本部長)
 ▽監査役(非常勤)兼任=島圖 良和( (株) レゾナック 基礎化学品事業部 企画部長)

退任監査役 (2024 年 3 月下旬開催の定時株主総会にて選任予定)

 ▽退任=長岡 徹(常勤監査役)
 ▽退任=上口 啓一(監査役(非常勤))

3. 執行役員の委嘱事項 (2024年1月1日付)

 ▽社長執行役員 事業本部長=山口 立太( (株) レゾナック 基礎化学品事業部 化成品部長)
 ▽執行役員 生産本部長 品質保証部、環境安全部管掌=疋田 豊和(執行役員 生産本部長 品質保証部、環境安全部管掌)
 ▽執行役員 管理本部長 兼 総務部長 内部監査室、CSR部、経営企画部管掌 CSR委員長=松橋 敬(執行役員 管理本部長 兼 総務部長 内部監査室、CSR部、経営企画部管掌 CSR委員長)
 ▽執行役員 副事業本部長=原田 守(執行役員 副事業本部長)
 ▽執行役員 経営企画部長=鈴木 純一(執行役員 経営企画部長)
 ▽執行役員 事業本部 クリーンガス事業部長=栗山 常吉(執行役員 事業本部 産業ガス事業部長)

部門長の異動(2024年1月1日付)

 ▽事業本部 クリーンガス事業部 水素ガス部長=田中 和彦(事業本部 産業ガス事業部 水素・冷媒部長)
 ▽事業本部 クリーンガス事業部 エアセパ・冷媒部長=小谷 靖久(事業本部 産業ガス事業部 産業ガス部長)
 ▽生産本部 生産部長=宮嶋 勝則(生産本部 生産部長 兼 川崎工場長)
 ▽生産本部 生産部 川崎工場長=橋本 孝光(生産本部 生産部 四日市工場長)
 ▽生産本部 生産部 四日市工場長=久保田 広宣(生産本部 生産部 大分工場長)
 ▽生産本部 生産部 大分工場長=野井 正樹(生産本部 生産部 川崎工場製造グループ長)

関係会社社長の就退任(2024年1月1日付)

東京液化酸素(株)

 ▽退任[相談役に就任]=竹内 陽一(代表取締役社長)
 ▽代表取締役社長=長井 太一( (株) レゾナック 業務執行役 石油化学事業部 大分コンビナート代表)

(株) 浜松エア・サプライ

 ▽退任[相談役に就任]=鈴木 好郎(代表取締役社長)
 ▽代表取締役社長=桜井 和宏( (株) レゾナック 石油化学事業部 大分コンビナート生産技術部)

レゾナック、ホテルの燃料電池向けに低炭素水素の正式供給を開始

使用エネルギーの約20%程度に該当する水素をパイプラインで供給

 レゾナックは、川崎事業所(神奈川県川崎市)で生産している低炭素水素を、2023年11月1日から川崎キングスカイフロント東急REIホテル(以下、東急REIホテル)へ正式に供給を開始した。使用済みプラスチック由来の低炭素水素による燃料電池の商業施設での利用は、国内初。

 11月14日にはホテルが位置するキングスカイフロント「殿町プロジェクト」のまちびらきセレモニーが開催され、参加者に対し東急REIホテル内でレゾナックの「川崎プラスチックリサイクル(KPR)」の紹介や、ホテルの燃料電池設備の見学などを行った。

東急REIホテルの燃料電池
ホテルを見学するセレモニー参加者

 低炭素水素とは、生産過程のCO2排出量を最小限に抑えた水素のことで、レゾナックの低炭素水素は日本で唯一、家庭ゴミから出る使用済みプラスチックを原料としている。同社は2018年6月より東急REIホテルへ低炭素水素を供給してきたが、これは2015年にスタートした環境省の「地域連携・低炭素水素技術実証事業」での中での取り組みだった。2022年3月に当実証事業は終了し、東急REIホテルは燃料電池設備を新たなものに入れ替えるとともに、レゾナック製の低炭素水素を正式に使用開始した。同ホテルで使用するエネルギーの約20%程度に該当する水素をパイプラインで供給する。

 レゾナック川崎事業所では、使用済みプラスチックから水素を取り出す製造方法を2003年から導入している。この技術は、使用済みプラスチックを安定的に処理することで環境汚染を防止するとともに、リサイクルによりエネルギー源に再生することで、循環型社会の構築に貢献する。 

東急REIホテル内のKPR紹介コーナー

レゾナックHD 2023年12月期第3四半期連結決算

化学品は原燃料価格上昇に対応した価格転嫁が進み、増収増益

 レゾナック・ホールディングスの2023年12月期第3四半期連結決算は、売上高9423億0700万円(前年同期比8.9%減)、営業損益43億0900万円の損失(前年同期は547億4800万円の営業利益)、経常損益71億5000万円の損失(同653億2800万円の経常利益)、親会社株主に帰属する四半期純損益63億6700万円の損失(同366億7800万円の純利益)となった。

 通期の業績予想を修正し、売上高1兆2900億円(前年同期比7.4%減、前回予想比200億円増加)、営業損益120億円の損失(前年同期は617億2600万円の営業利益、同80億円増加)、経常損益210億円の損失(同617億1100万円の経常利益、同50億円増加)、親会社株主に帰属する純損益430億円の損失(同324億2200万円の純利益、同60億円減少)とした。年間配当金の予想は前回予想の65円を維持した。

 売上⾼は、主に半導体・電⼦材料セグメント及びケミカルセグメントの増収を⾒込み、通期予想を上⽅修正した。営業利益は、売上⾼予想の上⽅修正及び全社共通費⽤の削減等により、通期予想を上⽅修正、経常利益は、営業利益の上⽅修正に伴い、通期予想を上⽅修正した。

 ⼀⽅、親会社株主に帰属する当期純利益は、第3四半期には診断薬事業譲渡益243億円を特別利益として計上したが、特別損失としてハードディスクメディア事業再編等に伴う構造改⾰費⽤の計上を⾒込み、通期予想を下⽅修正した。構造改⾰費⽤には特別退職⾦65億円や減損損失41億円が含まれる。

 第3四半期連結累計期間の売上高は、ケミカルセグメントでは増収となった。石油化学における数量増(前年同四半期連結累計期間は4年に一度の大型定修を実施)、黒鉛電極、基礎化学品における販売価格の上昇等がそれぞれ増収の要因。半導体・電子材料セグメントは、半導体、電子材料関連業界の調整の影響により減収、モビリティ、イノベーション材料の2セグメントも減収となった。

 営業損益は、モビリティセグメントは自動車部品の数量増、イノベーション材料セグメントは主に値上げ効果により増益。半導体・電子材料セグメントは大幅な減益となった。ケミカルセグメントは黒鉛電極の受払差のマイナス影響等により減益。営業外損益は、前年同四半期連結累計期間に比べ為替差益の減少と持分法による投資利益の減少が見られ、全体では損失の増加となった。親会社株主に帰属する四半期純損益は、事業譲渡益はあったものの法人税等が増加した。 

当期の関連するセグメント別概況

【半導体・電子材料セグメント】

 半導体前工程材料および半導体後工程材料は、前年後半からの半導体市場の低迷により減収となった。デバイスソリューションは、SiCエピタキシャルウェハーが増収となったものの、HDメディアが前年第4四半期からのデータセンター向け需要低迷が継続したことにより、大幅減収。セグメント売上高は2416億9700万円(前年同期比27.3%減)、営業損益は、HDメディアの棚卸資産において、低価法による簿価切り下げや廃棄損を計上し、124億6300万円の損失(前年同期は405億2000万円の営業利益)

【ケミカルセグメント】

 石油化学は前年に4年に一度の大型定修による停止があったため前年同四半期連結累計期間比で増収増益となった。化学品は、原燃料価格上昇に対応した価格転嫁が進み、増収増益。黒鉛電極は原価上昇にキャッチアップした値上げにより増収となるも、受払差のマイナス影響により減益となった。セグメント売上高は3847億2700万円(前年同期比2.1%増)、営業利益は102億1400万円(同47.1%減)。

レゾナックと川崎重工「川崎地区での水素発電事業開発にかかる協業の覚書」を締結

2030年頃にレゾナック川崎事業所で100MW以上の水素発電事業を開始

 レゾナックと川崎重工業は2023年10月17日、2030年頃の水素利活用を見据えた「川崎地区の水素発電事業開発にかかる協業の覚書」(以下、本覚書)を締結した。


(左)川崎重工業 常務執行役員 原田 英一 水素戦略本部長 、(右)レゾナック 理事 原 聡 基礎化学品事業部長

 本覚書では、国際液化水素サプライチェーンの確立が見込まれる2030年頃に、レゾナック川崎事業所で100MW以上の水素発電事業(CO2削減量70万トン相当*)を開始し、クリーンなエネルギーを電力市場に供給するとともに両社で活用することで脱炭素化を目指す。

※)環境省「電気事業分野における地球温暖化対策の進捗状況の評価結果について」(参考資料集)(P36)をもとに計算 https://www.env.go.jp/content/900515878.pdf 

 水素は燃焼時にCO2を排出しないため、脱炭素社会に貢献する次世代エネルギーとして世界中で注目されている。今後、2030年ごろに国際液化水素サプライチェーンが確立することが見込まれているが、供給側の着実な歩みとともに、供給された大量の水素の具体的な活用先についても検討を進めていく必要がある。

 両社は、NEDOのグリーンイノベーション基金事業「液化水素サプライチェーンの商用化実証」(以下、商用化実証)で、液化水素受入基地の建設予定地となっている川崎臨海部にあるレゾナック川崎事業所(神奈川県川崎市)における水素発電の協業検討を開始している。

 レゾナックグループは、半導体・電子材料、モビリティ、イノベーション材料、ケミカル等を展開し、川中から川下まで幅広い素材・先端材料テクノロジーを持ち、「共創型化学会社」として、共創を通じて持続的な成長と企業価値の向上を目指す。2021年に長期ビジョンで2030年のGHG排出量削減目標を「2013年比30%削減」とした。徹底した合理化、効率化、省エネルギー、ガス燃料への転換を進め、2050年に向けては水素などクリーンな燃料への転換を推進することでカーボンニュートラルの達成を進める。

 川崎重工は、2010年からカーボンニュートラルの切り札である水素に着目し、液化水素サプライチェーン全体(つくる・はこぶ・ためる・つかう)にわたる技術開発を進めてきた。2018年には世界で初めて市街地での水素100%による熱電供給を達成。2022年2月には、同社が建造した世界初の液化水素運搬船「すいそ ふろんてぃあ」による日豪間の海上輸送・荷役実証を完遂し、液化水素サプライチェーンの構築が可能であることを証明した。現在は、2021年に設立した子会社の日本水素エネルギー株式会社(JSE)を中心に、2030年までに液化水素の海上輸送技術の確立を目指す商用化実証に取り組む。

 レゾナック川崎事業所のある川崎地区は、臨海部にあることから海上輸送を通じた大規模な水素調達に適している。両社は、地の利を活かし、大量の水素の需要元となる水素発電事業の開発に関して、事業スキーム・発電システムの仕様・水素等の供給方法などについてレゾナック川崎事業所における調査・検討を行う。 

レゾナック川崎事業所航空写真(中央部)

 今後両社は、本覚書による水素発電の社会実装に向けた取り組みを通じて、2030年頃の川崎地区における水素発電によるクリーンな電源供給と、我が国のカーボンニュートラルの実現に貢献する。

本覚書による検討事項

  1. 川崎地区の水素発電事業にかかる事業スキームの検討
  2. 水素発電にかかる設備仕様・法規制対応・各種契約の検討
  3. 水素普及に向けた政府の支援制度の利用に関する検討
  4. 燃料調達スキームの検討、等 

両社のコメント

レゾナック 理事 原 聡  基礎化学品事業部長

「レゾナックは、川崎事業所で独立系発電事業者(IPP)国内第一号として長年発電事業に取り組んできました。このたびの水素発電事業は当社にとって大きな転換点です。早くから水素に着目し、技術的知見のある川崎重工様との共創を通じて、カーボンニュートラルを実現するクリーンな電源供給に向けて世の中の期待に応えるとともに、水素の普及に貢献していきます」

川崎重工 常務執行役員 原田 英一  水素戦略本部長

「日本のCO2排出量の約4割を占める発電セクターで水素利用を推進することは、カーボンニュートラルの実現において重要な役割を果たします。今回はレゾナック様と一緒に水素の社会実装に向けた検討を進めることになったことを大変喜ばしく思います。本覚書の締結を通じて、水素を利用したクリーンなエネルギーの提供とカーボンニュートラル社会の早期実現に貢献していきます」

レゾナックHD 2023年12月期第2四半期連結決算

半導体・電子材料セグメントは、関連業界の調整で大幅減収

 レゾナック・ホールディングスの2023年12月期第2四半期連結決算は、売上高6161億2600万円(前年同期比6.1%減)、営業損益131億6500万円(前年同期は379億5100万円の営業利益)、経常損益113億5700万円(前年同期は477億0600万円の経常利益)、親会社株主に帰属する四半期純損益198億1700万円(前年同期は326億1200万円の純利益)となった。

 売上高はケミカルセグメントでは増収。石油化学における数量増(前年同四半期連結累計期間は4年に一度の大型定修を実施)、黒鉛電極における販売価格等の上昇、基礎化学品における数量増、がそれぞれ増収の要因となった。半導体・電子材料セグメントは、半導体関連業界の調整の影響により大幅な減収、モビリティ、イノベーション材料の2セグメントも減収となった。

 営業損益は、モビリティセグメントは自動車部品の数量増により増益となったが、半導体・電子材料セグメントは大幅な減益。さらに、イノベーション材料は数量の減少、ケミカルは黒鉛電極の受払差のマイナス影響等により減益だった。

 営業外損益は、前年同四半期連結累計期間に比べ金融費用の増加と為替差益の減少が見られ、全体では損失の増加となった。純損益は、優先株式への配当金支払がなくなったこと等により、198億17百万円の損失。

 通期連結業績予想を修正し、上期における増減を背景に売上高は1兆2700億円(前回予想1兆3400億円)へ下方修正、経常損益は260億円の損失(同310億円の損失)、親会社株主に帰属する当期純損益は370億円の損失(同460億円の損失)へ為替差益等の改善等により上方修正した。また、配当金は未定としていたが、中間0円、期末65円に修正した。

当期の関連するセグメント別概況

【半導体・電子材料セグメント】

 半導体前工程材料および半導体後工程材料は、前年後半からの半導体市場の低迷により減収となった。デバイスソリューションは、SiCエピタキシャルウェハーが増収となったものの、HDメディアが前年第4四半期からのデータセンター向け需要低迷が継続したことにより、大幅減収。

 セグメント売上高は1533億9300万円(前年同期比30.4%減)と大幅減収となった。営業損益は、HDメディアの棚卸資産において、低価法による簿価切り下げや廃棄損を計上したこともあり、130億9800万円(前年同期は273億0900万円の営業利益)の営業損失だった。

【ケミカルセグメント】

 石油化学は前年に4年に一度の大型定修による停止があったため前年同四半期連結累計期間比で大幅な増収となるも、受払差のマイナス影響により減益となった。産業ガスを含む化学品は、原材料および燃料価格上昇に対応した価格転嫁が進み、前年同四半期連結累計期間比で増収増益。黒鉛電極は原価上昇にキャッチアップした値上げにより前年同四半期連結累計期間比で増収となるも、受払差のマイナス影響により減益だった。

 セグメント売上高は2549億2000万円(前年同期比13.5%増)、営業利益は47億6800万円(同63.6%減)の増収減益となった。

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