三菱重工が日本液炭水島工場でCO2回収装置を完工

回収能力283トン/日、三菱ケミカル水島事業所で発生するCO2を回収し液化炭酸ガス製造

 三菱重工業は、日本液炭の水島工場(岡山県倉敷市)でCO2回収装置を完成させた。同工場にこのほど新設された液化炭酸ガス製造設備を構成するもので、CO2回収能力は283トン/日。この液炭設備は、三菱ケミカルの水島事業所(倉敷市)で発生するCO2を回収し、液化炭酸ガスを製造する。

日本液炭 水島工場のCO2回収装置
日本液炭 水島工場のCO2回収装置
日本液炭、水島工場での液化炭酸ガス製造設備で生産開始

 三菱重工は液炭設備全体のEPC(設計・調達・建設)を請け負う三菱ケミカルエンジニアリング株式会社にCO2回収技術のライセンスを供与するとともに、CO2回収装置の基本設計を担当し、主要機器を供給した。

 日本液炭は大陽日酸のグループ企業で、日本国内の炭酸ガス関連事業を手掛けている。石油化学会社やアンモニアメーカーなどから高濃度の原料炭酸ガスを購入し、液化・精製して液化炭酸ガスやドライアイスとして販売する。

 大陽日酸グループは、2014年11月に三菱ケミカルホールディングスグループの一員となり、同グループの事業会社各社との協働を進める。今回の液炭設備は、日本液炭が水島工場を置く三菱ケミカル 水島事業所内で発生する低濃度の炭酸ガスから吸収液を用いてCO2を分離・回収し、高品質な液化炭酸ガスを製造するもの。

 この液炭設備は、今後の中四国から関西地区に向けての炭酸のさらなる安定供給に貢献する。三菱重工は、本工事を液化装置の建設工事と密に連携して無事故・無災害で予定通りに完工したことにより、感謝状を授与された。

 三菱重工のCO2回収技術は、関西電力と共同開発した高性能な吸収液(KS-1™)を用いた「KM CDR Process®」と呼ばれる化学吸収法で、エネルギー消費量が従来法に比べ大幅に少ないのが特長。1999年から、天然ガス焚きや石炭焚きのプラントなどで発生する排ガスからのCO2回収商用装置を、世界各地で12基稼働させており、CO2回収装置の商用実績では圧倒的な世界トップシェアを誇る。

 CO2回収技術は、液化炭酸ガスやドライアイスの製造用に加え、尿素、メタノール、ジメチルエーテル(DME)の製造など化学用途、さらには、火力発電所などから発生するCO2の回収・貯留(CCS)や、生産性が低下した油層にCO2を圧入して生産増加をはかる原油増進回収(EOR)などでの幅広い利用が可能とされる。