エア・ウォーター・インディア、国営鉄鋼公社ドゥルガプル製鉄所のオンサイトガス供給を受注

インドで初の大型深冷空気分離装置、酸素生産能力3万6500N㎥/h、投資額135億円

 エア・ウォーターの100%子会社のAir Water India Private Limited(代表取締役社長 道谷 一夫、以下、エア・ウォーター・インディア)は、インド国営製鉄会社のSAIL(Steel Authority of India Limited)社から、インド東部のドゥルガプル製鉄所向けオンサイトガス供給を受注した。今後、日本・アメリカ・インドのエンジニアリング部門が中心となり、最新鋭の深冷大型空気分離プラントの設計・製作を進め、2025 年10月にガス供給を開始する。

建設予定地とエア・ウォーター・インディアの事業拠点
建設予定地とエア・ウォーター・インディアの事業拠点
  • 工場名:エア・ウォーター・インディア ドゥルガプルオンサイト工場
  • 所在地:西ベンガル州ドゥルガプル(SAIL 社ドゥルガプル製鉄所隣接地)
  • 製造品目:酸素、窒素、アルゴン
  • 酸素生産能力:1,250 トン/日(約36,500N ㎥/h)
  • 投資額:約135 億円
  • 建設開始:2023 年9 月
  • 稼働開始:2025 年10 月(予定)

※製造したガスは、製鉄所向けにパイピング供給するほか、一部は液化してタンクローリー等で周辺地域の顧客へ販売する。

プロジェクト概要

 エア・ウォーターは、海外における産業ガス事業を全社成長の牽引役と位置付けており、中でもインドを重要戦略エリアと捉えている。同国においては、鉄鋼メーカー向けオンサイトガス供給事業を基軸に、インド全域における事業展開を見据え、製造・輸送・販売インフラのネットワークを構築。エア・ウォーター・インディアは、鉄鋼生産の拡大を背景に拡張投資が続く鉄鋼メーカー向けオンサイトガス供給案件の新規受注を目指し、提案活動を進めてきた。

 また、エア・ウォーターは、ガス供給に不可欠な深冷空気分離プラントの開発・設計・製作・運転・メンテナンス機能を一貫して保有。同時に、酸素製鋼法の黎明期から半世紀にわたり日本国内の大手鉄鋼メーカーと緊密に連携し、製鉄所の操業に対応した高効率なガス生産と安定供給にかかわる実績とノウハウを蓄積してきた。加えて、近年はアメリカ・インドのエンジニアリング部門の強化に取組むことで、グローバル市場におけるプラントエンジニアリング体制の構築を進めている。

 本プロジェクトにおいては、大型プラントの製作実績が豊富な日本・アメリカで重要機器の設計・製作を行い、汎用機器の調達や据付等の現地工事を行うインド現地との連携によるグローバルエンジニアリング体制のもと、コスト競争力のあるガス供給を実現する。

 今回の受注は、インド国営製鉄会社である SAIL 社から、長年に渡る鉄鋼メーカー向けオンサイトガス供給の実績とインドにおける産業ガスメーカーとしての存在感を高く評価されたもの。エア・ウォーターにおいては、インドで初となる大型深冷空気分離プラントの受注となり、同時に、タタスチール向け(東部ジャムシェドプル工場)、JSW スチール向け(南部ベッラーリ工場)に続く、同国 3 カ所目の鉄鋼向けオンサイトガス供給拠点となる。

インド鉄鋼市場と事業戦略について

 インドは世界一の人口(約14 億2,860 万人)による旺盛な内需を背景に、今後も高い経済成長率が見込まれている。また、インド政府は、道路・建設等のインフラ投資や自動車をはじめとした製造業振興を進める中で、2030 年度までに年間粗鋼生産能力を現在の倍以上となる3 億トンにまで拡大する目標を掲げる。

 鉄鋼資源である鉄鉱石や石炭の産出国であることを強みとし、インドの鉄鋼生産量は 2017 年に 1 億トンを超え、2018 年には日本を抜き中国に次ぐ世界第2 位の生産量を誇る。また、製造業のサプライチェーン見直しの動きが世界的に加速する中、新たな製造拠点としても注目されていることに加え、高機能鋼の生産により輸出も増加する見通しであり、鉄鋼市場は今後も大きな成長が期待され、産業ガスの旺盛な需要が見込まれる。

 エア・ウォーター・インディアは、「鉄鋼メーカー向けオンサイトガス供給の新規獲得」と「拠点拡充によるガスサプライチェーンネットワークの構築」を基本戦略に据え、市場成長を捉えながら継続的な事業拡大を図る。2023 年度末には、これまで未進出であった北部エリアに充填工場が稼働、さらに2024年10月には南部の主要都市チェンナイに使用電力の約4割を太陽光などの再生エネルギーで賄う液化ガス製造プラントの稼働を予定。今後も需要に見合った設備投資を実行し、事業エリアをインド全域に広げ、産業ガスメーカーとして確固たるポジションを獲得する。

 将来的には、産業ガス供給における事業基盤をもとに、エア・ウォーターグループが保有する医療、環境・エネルギー、食品等の多様な事業や技術力を展開することで、2030 年度に現在の約5 倍となる売上収益1,000 億円を目標に事業拡大を進める。

日印関係強化への貢献

 日本政府は、2023 年の G20 議長国であり「グローバル・サウス」の代表格として存在感を高めるインドと、政治・社会・安全保障などの領域で多面的に結びつきを強めており、なかでも経済面での連携強化は両国の大きな注力事項となっている。今回、日系企業であるエア・ウォーターが、インド国営企業である SAIL 社との間で本件大型事業に取組むことは、日印経済連携の中でも重要な意義を持つ。

 エア・ウォーターでは今後も、インドの経済成長と共に発展していくビジネスパートナーとして、事業活動を通じて同国の経済成長に寄与し、新たな雇用機会の創出、CO2 排出削減、衛生環境の改善といった社会問題の解決に取組むことで、日印関係の一層の発展に貢献するとしている。

エア・ウォーター・インディア社の概要

  • 会社名 :Air Water India Private Limited
  • 本社所在地:西ベンガル州コルカタ
  • 事業内容 :産業ガス、医療用ガスと関連機器装置の製造・販売
  • 売上高 :約180 億円(2023 年3 月期)
  • 従業員数 :400 人