「第17回 イワタニ水素エネルギーフォーラム 東京」を開催

大阪・関西万博で水素燃料電池船「まほろば」運航、水素の可能性・魅力を世界に発信

 岩谷産業は2024年6月4日、東京都千代田区の東京国際フォーラム「ホールB7」で「第17回 イワタニ水素エネルギーフォーラム 東京」を開催した。テーマは「水素エネルギー社会の実現に向けて」。本フォーラムは水素エネルギー普及の気運を盛り上げ、ネットワークづくりの“場”を提供することを目的に、2006年から開催されているもので今回で17回目となる。

第17回 イワタニ水素エネルギーフォーラム 東京
第17回 イワタニ水素エネルギーフォーラム 東京

 プログラムでは午後1時半から休憩をはさんで午後5時まで、経済産業省 資源エネルギー庁 省エネルギー・新エネルギー部長の井上博雄氏より「水素等を巡る最近の動向について」の来賓挨拶の後、川崎市 臨海部国際戦略本部長の玉井一彦氏から「川崎カーボンニュートラルコンビナート構想」、日本製鉄 グリーン・トランスフォーメーション推進本部総合企画部 参与の堀見泰資氏から「カーボンニュートラルへの取り組み」、CJPT プロジェクトリーダー 兼 トヨタ自動車 CV Company 担当部長の今井康人氏から「商用電動車普及に向けたCJPTの取り組み」、水素バリューチェーン推進協議会(JH2A) 担当部長の斎藤健一郎氏から「水素社会実現に向けたJH2Aの取り組み」の4つの特別講演が行われ、関係各界から689名が来場した。

 岩谷産業の間島寬 代表取締役社長執行役員は、開会の辞の中で5月に参議院本会議で成立した「水素社会推進法」と「CCS事業法」について言及し、「我々が特に注目しているのは、水素と既存燃料との価格差を継続的に支援する値差支援、もう1つは国内のエネルギー拠点の整備に助成金を交付する拠点整備支援です。それ以外にも水素の普及を後押しするための特例措置など、官民一体となって取り組むことで国際的にも競争力のある強靭なサプライチェーンの構築がいよいよ目に見える形になってまいりました」と述べ、水素エネルギー社会実現への意欲を語った。 

開会の辞を述べる間島社長
開会の辞を述べる間島社長

 現在、岩谷産業は川崎重工業やINPEXとともに、グリーンイノベーション基金を活用した日豪間での液化水素の国際サプライチェーンの大規模実証を実施している。水素は燃焼分野での利用により需要は広がりを見せているが、海外からの水素サプライチェーンの商用化にはもう少し時間がかかる見込みで、国内の水素製造能力増強を早急に進める必要がある。岩谷産業は、液化水素の国内4つ目となるプラント建設の検討と並行し、愛知県名古屋港近郊で廃プラスチックからケミカルリサイクルによる水素製造を豊田通商、日揮ホールディングスと連携して2020年代の後半の製造開始を目指す。

 また、水素ステーションの整備では今後、FCトラックやFCバスなどの商用車向けの水素需要のさらなる拡大が見込まれる。岩谷産業は2023年9月に、日本で初めて高速道路上に「イワタニ水素ステーション足柄SA」をオープン。さらに2024年4月にはコスモ石油マーケティングとの合弁会社、岩谷コスモ水素ステーション合同会社が「岩谷コスモ水素ステーション平和島」を日本で初めてトラックターミナル内に開所した。都内ではさらに江東区の有明と新砂で、FCバスやFCトラック向け水素ステーションの建設に取りかかっている。

 間島社長は「岩谷産業では船舶のFC化にも取り組んでおり、2025年の大阪・関西万博では会場となる夢洲(ゆめしま)とユニバーサルシティポート、中之島ゲートの3地点を150人乗りの水素燃料電池船で結ぶことを予定しております。先月末には、水素燃料電池船の命名式・進水式を広島県尾道市の造船所にて取り行いました。船名は『まほろば』と命名し、来年4月からの運航に向けて着実に準備を進めております」と話し、世界中から注目を集める大阪・関西万博の開催を絶好のチャンスとして水素の可能性、魅力を世界に発信したいとした。