エア・ウォーター・インディアがインド・チェンナイに液化ガス製造プラントを新設

自社プラントの設置によりインド南部のマーケットシェア拡大

 エア・ウォーターの100%子会社であるAir Water India Private Limited(道谷 一夫 代表取締役社長、以下、エア・ウォーター・インディア)は、インド南部に位置するタミルナド州チェンナイに、酸素・窒素・アルゴンの液化ガス製造プラントを新設することを決定した。2023年10月着工、2024年10月の稼働を予定しており、南部エリアにおける製造拠点の新設を通じて、インドにおける事業成長を加速させる。

インドにおける事業戦略

 エア・ウォーターは、海外における産業ガス供給事業を全社成長の牽引役と位置付けており、中でもインドを重要戦略エリアとしている。インドでは、政府が2030年度までに同国全体の年間粗鋼生産能力を現在の倍以上となる3億トンにするという目標を掲げていることに加え、さらなる経済成長と人口増に伴い、産業ガスも旺盛な需要が見込まれる。

 エア・ウォーターは、エア・ウォーター・インディアを通じ、2019年に産業ガスメジャー2社のインド現地法人から両社がインドで行う産業ガス事業の一部を取得した。現在、同国で第1位、第2位の規模を誇る製鉄所向けのオンサイトガス供給事業と、インド東部および南部を中心としたローリー・シリンダー事業を展開している。

 現在、エア・ウォーター・インディアでは、「鉄鋼向けオンサイトガス供給の新規案件の獲得」と「面的な拠点拡充による製造・物流インフラの構築」を基本戦略としている。特に、産業ガスの製造・充填・輸送をはじめとした供給インフラネットワークを拡充し、鉄鋼関連産業が集中するインド東部から、自動車産業が集積する南部での生産能力増強やデリー首都圏の北部エリアへ進出することで、さらなる事業拡大を目指す。

エア・ウォーター・インディアの事業拠点
エア・ウォーター・インディアの事業拠点

チェンナイ工場の位置付け

 今回、新たに液化ガス製造プラントを設置するインド南部エリアは、自動車関連産業の一大集積地となっており、日系企業も多数進出している。タミルナド州政府は州内製造業の年間成長率15%を目標に掲げ、近年は電気自動車や電子部品関連の工場も数多く立地するなど、インドで最も高い経済成長が期待されている地域となる。

 エア・ウォーター・インディアは、これまでベッラーリ工場で製造するガスを中心に、チェンナイ周辺の顧客へ販売してきたが、年々高まるガス需要の増加に対応するため、チェンナイに立地する既設のシリンダー充填工場に併設する形で、液化ガス製造プラントを新設する。本プラントで製造した酸素・窒素・アルゴンをチェンナイ周辺の製造業や医療用ガスとして医療機関へ供給することで、インド南部エリアでのマーケットシェア拡大を目指す。

 なお、本プラントは、インドにおいて、設計・製作から据付・運営までを自社グループで手掛ける初の自社プラントとなる。同国でのさらなる事業拡大を見据え、本プラントの建設に合わせて現地でのエンジニアリング体制の拡充も図る。

プラントの特長(環境対応を考慮した再生可能エネルギーの導入について)

 中国、米国に次ぐ世界第3位のエネルギー起源CO2排出国であるインドにおいて、政府はCO2排出量削減のため、電源構成に占める再生可能エネルギーの割合を大幅に引き上げる目標を発表している。

 本プラントの稼働においては、年間使用量の40%に相当する電力について、タミルナド州のオープンアクセス制度に基づき、太陽光など再生可能エネルギーの導入を計画している。これにより、非再生エネルギーを100%利用する場合に比べて約35%のCO2削減が見込まれる。

 エア・ウォーター・インディアは、本取組を通じて政府目標に賛同するとともに、今後も電力調達の安定化、電力コストの低減、CO2排出量の削減に取り組むとしている。

※送配電系統の自由化により、需要家は発電事業者や電力供給者を選択できる仕組み。

新設するプラントの概要

  • 名称:エア・ウォーター・インディア チェンナイ工場
  • 所在地:タミルナド州チェンナイ
  • 製造品目:液化酸素、液化窒素、液化アルゴン
  • 製造能力:6,900N㎥/h(液化酸素:5,100N ㎥/h、液化窒素:1,600N ㎥/h、液化アルゴン:200N ㎥/h)
  • 建設開始:2023年10月(予定)
  • 稼働開始:2024年10月(予定)