日本海水と第一高周波工業、東北大学多元物質科学研究所が高周波誘導加熱を用いたマグネシウム製錬に成功

全量を輸入に頼る、国内生産に期待

 エア・ウォーターグループで塩の製造・販売や電力事業を行う、日本海水は、第一高周波工業株式会社と国立大学法人東北大学多元物質科学研究所材料分離プロセス研究分野(柴田浩幸 教授)との共同研究により、高効率な高周波誘導加熱を用いた試験装置を開発設置し、酸化マグネシウムを還元して金属マグネシウムを得る実験に成功した。

図1:開発したMg 製錬装置の概略図
図1:開発したMg 製錬装置の概略図
図2:製錬された金属マグネシウム外観
図2:製錬された金属マグネシウム外観

 日本海水は、海水中のマグネシウムより水酸化マグネシウムを製造する。水酸化マグネシウムを原料として、金属マグネシウムのベース原料となる酸化マグネシウムを試作し、高周波誘導加熱による熱還元法にて金属マグネシウムを得る製錬技術の開発に取り組んできた。

 マグネシウムは実用金属中、最軽量であり、構造材として用いられる他、アルミ合金の添加剤、鉄鋼生産における脱硫剤、チタン生産における還元剤などの重要な役割を果たしている。しかし、全量を輸入に頼っているため、資源の安全保障の観点から国内生産が望まれていた。

 最近では供給国が限定されていることによるカントリーリスクも高まっており、今後、マグネシウムの利用を拡大するためには化石燃料によらない製錬技術の確立が必要とされる。また、海水にはマグネシウムが豊富に含まれており、海水から採取した水酸化マグネシウムを再生可能エネルギーや余剰時のエネルギーを使って金属マグネシウムに製錬することができれば、CO2 の削減および資源のカントリーリスク低減の利点がある。

 また、マグネシウムはエネルギーキャリアとしても、CO2 を発生しないだけでなく、エネルギー密度、保存性、輸送性等あらゆる点で優れた能力を備える。その循環利用技術と社会システムを構築することにより、地産地消のエネルギー利用、再エネ電力供給の安定化、エネルギー備蓄による防災対策、モビリティの電動化などにおいて社会のエネルギー・セキュリティに多様に貢献することが出来るとしている。